TOKYO FMで2023年5月5日(金・祝)に放送された特別番組「JFN Special Life Time Audio 2023~My First Music~『14歳のプレイリスト』」。“14歳のときに出会った音楽”をキーワードに、一生ものの音楽体験・音楽との出会いをお届けしたい、そういった主旨の番組です。
今回は、TOKYO FMのラジオ番組「おと、をかし」を担当するロックバンド[Alexandros]の川上洋平さんがパーソナリティをつとめました。リスナーから寄せられた14歳のころに聴いていた音楽と、そのエピソードを紹介。川上さんが生演奏でカバーを披露する場面もありました。
番組では特別企画として、川上さんがかねてよりファンを公言しているロックバンド「くるり」の岸田繁さんとのメディア初対談の模様をオンエア。お互いの音楽への印象、それぞれが14歳のころに聴いて影響を受けた音楽、そして名曲誕生秘話など、ここでしか聴けない貴重なトークを繰り広げました。この記事では、その一部の内容を紹介します。
(左から)くるり・岸田繁さん、[Alexandros]川上洋平さん
――2人は14歳のころ、どんな曲を書いていたのでしょうか?
川上:今と変わらない、どストレートな曲を書いていました。
岸田:そうなんや。ギターも弾いていた?
川上:弾き語りとかでやっていましたね。
岸田:14歳のころに作っていた曲、覚えてます?
川上:弾き語りしかやっていなくて、録音をしていなかったけど(頭のなかでは)覚えています。
岸田:今、それを録音しようと思ったりします?
川上:しようとするんですけど、恥ずかしくて(笑)。
岸田:俺はシンガーじゃなくて、コピバンのバックのギタリストやった。曲を書いて提出しても、僕の曲をやってくれなかったんですよ。だから、宅録できるやつを買って、それでオリジナルの曲を書いて宅録したんです。
英語で歌詞を書くんですけど、英語力が地に落ちているレベルだったんで、「ガバメント」っていう曲を書きました。クソダサいんですよね。
川上:聴いてみたいです。
岸田:表舞台から引退するときに録音しようと決めています(笑)。
川上:僕は(当時住んでいた中近東の国から)日本に帰ってきて、「ミュージシャンになりたい!」って思ったんですけど、好きなのは洋楽で、アマチュアながらに書いていた歌詞も英語だったんです。
「日本語で歌詞が書けないな……」って思ったときに、くるりさんの「青い空」を聴いたんです。僕が最初に聴いた、くるりさんの曲です。ギターが鳴っていて、すごく印象的な日本語が入ってきて、そして、それがストンと落ちた。
岸田:うれしい。
川上:日本語のロックってめっちゃカッコいいんだなと思えたのはそのときです。98年、99年にくるりさんを聴いて救われた部分はあります。俺もこの国でロックをかき鳴らしていけそうかなと思えました。
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岸田:へええ!
川上:そこから、知れば知るほど「この人天才すぎる!」「でも、追っていいものなのか」と思ったんですよ(笑)。
岸田:ややこしいとは思います(笑)。
川上:そこから一度、距離ができるんですけど、僕がサラリーマンをやり始めたときにまたくるりを聴き始めて。『Philharmonic or die』(くるり初のライブベスト盤)を死ぬほど聴いていました。あのときは救われましたね。
岸田:ありがとうございます。
川上:[Alexandros]の楽曲「ワタリドリ」は、そこから(注:『Philharmonic or die』収録曲「ブレーメン」の歌詞から)来ているんじゃないかな、って僕は思っています(笑)。
岸田:マジで!? それはうれしいなあ。
川上:“渡り鳥(ワタリドリ)”っていい発音だな、単語としてすごくいい流れだなと感じたんです。
岸田:フローを取ってくれたんやね。実は僕、歌詞を書くのが苦手なんですよ。今でも苦手。
川上:そうなんですか!?
岸田:できるときは楽しいねんけど、“やらなあかん”と思ったときは、すごくしんどい感じ。歌詞に“渡り鳥”が出てくる「ブレーメン」って曲は、先にメロディーができたんです。そのときは楽器を弾いてではなく、頭のなかで鳴っているスコアを書いて作ったんです。メロディーが童謡みたいにカッチリしていて、いつもみたいに手癖のメロディーに、手癖の歌詞をはめることができなくて、すごく悩んだんです。
そのときはウィーンにいて、いろんな国の人がいるから英語しか喋らないんです。母国語で話している人がおらへんけど、俺らだけ群れて日本語で喋っているから、日常会話も含めて日本語を禁止にしたんです。バンドとスタッフの人たちに。
川上:おおっ!
岸田:そんなときに日本語の歌詞を書かないといけなくなって。僕は今も、普段喋っている言葉を歌っている印象で音楽をやっているんですけど、(ウイーンでは日本語を禁止にしていたので)“よく知ってるんやけど緊張する”みたいな感じで「ブレーメン」の歌入れをしたんです。
通じないと思うんですけど、動いているベルトコンベアに言葉を乗せていくような感覚で歌ったんです。リズムを入れる位置も、普段とは全然違う感じで入れました。
川上:そうだったんですね。
岸田:その作業が気持ちよかったのは覚えているんです。“不思議なものができたな”と思いました。(「ブレーメン」に出てくる)渡り鳥の歌詞を歌っているときも、普段よりも言葉を大事にするというか、情景を見ながら歌っている感覚でしたね。なので、そういうふうに言っていただけたのが、うれしかったです。
川上:今、ちょっと鳥肌が立ちました(笑)。
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番組では他にも、楽曲制作の裏側、今だから言えるライバルたちとの関係値、「今後こうありたい」という理想像など、音楽談義を繰り広げました。
放送でオンエアしきれなかった対談パートの「完全版」をTOKYO FMの音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」で配信中です。ぜひ、チェックしてください。
<番組概要>
番組名:JFN Special Life Time Audio 2023~My First Music~「14歳のプレイリスト」
放送日時:2023年5月5日(金)15:00~17:00
パーソナリティ:川上洋平
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/fourteen/