脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。
TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに、茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
8月16日(土)の配信では「自分との約束を守る方法」に関する質問に答えました。
パーソナリティの茂木健一郎
<リスナーからの質問>
私は、「自分との約束が守れないこと」に悩んでいます。例えば、毎週ジムに通うと決めても、寝坊してしまったり、「今日は天気が悪いからジムに行くのはやめよう……」と思ったりすると、自分との約束が守れなくて、自己嫌悪に陥ります。こんな性格や行動パターンを変える方法はあるのでしょうか。
<茂木の回答>
素晴らしい、あなたは偉い! そうやって自分と約束をして、それを守ろうとするのは本当に素晴らしいことだと思います。
ただ、ご自身でお気づきかと思うんですけれど、自分との約束って守れないことが多くないですか? なぜかと言うと、脳って面白くて、「こういうことをやろう」と計画を立てるところと、それを実行するところは別の部分なんです。計画を立てるのは前頭前野を中心とする、脳の前のほうにある回路です。
一方で、行動する回路は、運動野、運動前野、補足運動野、大脳基底核、小脳といった、どちらかというと頭の上のほうから真ん中、あるいは後ろのほうに向かってある回路なんです。
自分が計画を立てて、同じ自分が実行していると思っているかもしれませんが、使っている脳の場所としては別々なんですね。ということは、そこのコミュニケーションは常にズレるということです。計画を立てる自分、それを実行する自分というのはズレている。だから人間らしくていいんじゃないですかね。
例えば子どもの頃、「将来はプロ野球選手になる」や「夏休みの宿題は最初の1週間で終わらせる」といった目標を立てても、そう上手くはいかない……という経験をしますよね。計画を立てるとき、我々は思いっきり理想を言うんですよ。でも、いざ実行するとなると、そんなに上手くはいかないわけでしょう? そこのズレがあるということを、まずは楽しんでほしいです。
完璧を目指してもしょうがないんですよ。完璧を目指すということは、計画を立てる自分(理想)と現実の自分が一致しているってことでしょう? そんな人生だと、ちょっとつまらなくないですか?
そうしたなかで、1つおすすめしたい考え方が「ベストエフォート(最善の努力)」というものです。「毎日ジムに行くぞ」と理想の計画を立てるのはいいことです。だけど現実は、いろいろと邪魔が入ったり、「雨だから面倒くさいなぁ。行きたくないなぁ」と思ったりすることもあるわけでしょう。目標と行動がズレてもいいんですよ。ただ、「サボってしまった」と気づいたら、そのときから修正を始めましょう。ジムを1日、2日サボってしまったとしても、お友達から「スイーツを食べに行こう」と誘われてジムに行けなかった日があったとしても、それはそれとして翌日からまたジムに通い始める。これが「ベストエフォート」です。
僕も「ベストエフォート」で毎日過ごしています。あなたと同じように理想と現実の狭間で迷っているし、みんなそうだと思うんです。完璧主義者の人ほど、「完璧にできないのなら、もういいや」と諦めてしまいがちなんですよ。でも、そこで諦めずに、自分にできる最善を尽くす。この「ベストエフォート」の考えを取り入れて、ぜひ取り組んでいただきたいなと思います。
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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎