モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。9月25日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「デジタル教科書正式導入へ紙とのハイブリッドも」。情報社会学が専門の学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
◆「デジタル教科書」が正式な教科書扱いに
中央教育審議会の作業部会は9月24日、デジタル教科書を紙と同様に正式な教科書と位置付け、検定対象とすることを盛り込んだ審議のまとめを了承しました。紙とデジタルを組み合わせた「ハイブリッド」も認め、3種類から選べる新制度となる見通しです。
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吉田:そこで本日は、塚越さんと「教育のデジタル化」について考えます。
ユージ:塚越さん、議論が続いてきたデジタル教科書、正式導入になりましたね。
塚越:学校教育法では現在、紙の教科書が正式な教科書として認めています。一部で使われている「デジタル教科書」は、紙と同じ内容を同じレイアウトで電子化したもので、「代替教材」という位置づけです。正式化されると、無償配布の対象となり、学習用端末で見やすいようにレイアウトされて、2030年度頃からの導入を見込んでいます。そして、紙とデジタル、両方を組み合わせた「ハイブリッド」の3種類から選べるスタイルにするそうです。
◆一方、海外では「紙媒体」へ回帰か
吉田:教育のデジタル化、子どもたちや保護者は、どんな印象を抱いているのでしょうか?
塚越:博報堂教育財団「こども研究所」が9月中旬から、全国の小学4年生~中学3年生を対象に調査を実施しています。一部保護者にも調査しているのですが、面白かったのは、例えば文章の入力についてです。保護者は、57.3%が「手書きがいい」と回答していますが、子どもだと30.8%と低くなっており、さらに「キーボードがいい」と答えた子どもが43.8%。子どもは若干デジタル寄りになっています。
他にも教科書は「紙かデジタルか」という問いもあって保護者の60.7%と過半数が「紙の教科書がいい」と回答しています。子どもの場合は紙がいいと答えたのは39.9%、デジタルの教科書がいいという回答も34.8%と拮抗している感じです。
ユージ:子どもたちは、デジタルを好む傾向ですかね?
塚越:そうですね。リスナーのみなさんもいろんな意見があると思いますが、教育のデジタル化は着実に進んでいます。例えば、全国の小中学生に1人1台のタブレットを配布する「GIGAスクール構想」は、普及率が9割を超えています。また、週3日以上端末を活用している小中学校も全国でおよそ9割になっています。
だからといって、紙はいらないかというと、そうでもありません。教育現場でデジタル化がはじまってから、さまざまな研究がおこなわれました。「電子書籍か紙か」というテーマの研究も世界中でおこなわれ、最終的な結論はまだ出ていないものの、学校環境だと紙の書籍や手書きのほうが、記憶への定着がデジタルよりも良いといった研究も多くなっています。
実際に日本よりも早く教育環境のデジタル化を進めたスウェーデンやフィンランドでは、この数年で紙を増やしていく、つまり紙媒体に戻る動きもあります。研究は続いているので最終的な結論ではないものの、学校教育としては、紙や手書きをもう一度大事にする動きが重視されているのは間違いないかなというところです。
吉田:紙とデジタルのバランスが重要になりそうですね。
塚越:そうですね。紙とデジタルは、教科や内容によって使い分けるべきかなと思います。例えば、化学を担当している高校教員の友人は、やはりデジタルは分かりやすくて説明しやすくなると言っています。化学や歴史などは、アニメーションを使ったりすると表現も分かりやすいですし、英語でもリスニングだったらデジタル教科書でボタンを押したら何回も音声が聴こえるなどそれはいいですよね。数学も図形などを学ぶ際にはデジタルがいいかなと思います。
逆に紙やアナログに向いている分野だと、やはり国語の作文や読解の手書きなどです。思考させるにはそれが向いているかなと思います。あとは、漢字の書き取りや美術なども最初の基礎的な段階では紙に書くほうがいいかなと思います。理科の実験なども、ある程度はデジタルとのハイブリッドでやっていくべきかなと思います。現場の教員としても、デジタル化を進めていくことが大事かと思います。
◆時代に合わせて柔軟に対応を
ユージ:塚越さんは、教育のデジタル化は、どう進めていくのがいいと思いますか?
塚越:ハイブリッドにやっていくべきですが、最低限、自分の名前を漢字で書くとかそういうことは大事かなと思います。スマホでも手書きできるツールはありますし、音声認識でしゃべったことが文章になるなど、技術のレベルが上がると環境も変化します。環境ごとに合ったやり方というのを、とにかく試行錯誤してこれからも研究を続けていくことが重要です。すぐに答えを出さず、少しずついろいろなことをやっていくことが大事かなと思います。2人はどうですか?
ユージ:デジタルになると運ぶ荷物の量が物理的に減らせるので、それがすごくいいなと思いました。一方で、デジタルになると教科書を忘れた場合、「隣の人に見せてもらいなさい」ということができなくなりますよね。
吉田:そっちですか。勉学じゃないほう……。
ユージ:好きな子が隣の席だったときの、あのドキドキを感じられなくなるので一長一短ありますね。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世