笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。8月17日(土)の放送は、
前回
に引き続き、株式会社ブリヂストン デジタルソリューションAI・IoT企画開発部部門長 花塚泰史(はなつか・やすし)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)花塚泰史さん、笹川友里
花塚さんは、2003年に株式会社ブリヂストンに入社。タイヤ先行技術開発部に配属され、以後一貫してデータ分析業務を担当。2013年に総合研究大学院大学博士課程了。2016年、中央研究所タイヤエレクトロニクス研究ユニットリーダーを経て、2017年新設のデジタルソリューションセンターへ異動。2023年1月より現職に就いています。
◆“デジタル人財”が増加、その背景にあるのは?
花塚さんはブリヂストン入社後に上司の許可を取り、大学院に入学。そして、最終的に博士号を取得していますが、ブリヂストンには以前からそうした学び直しの制度があると言います。「デジタルの領域に関わらず、社員が外部の大学や研究機関に一定期間所属し、研究を続けることができる社外留学制度があります」と説明すると、笹川は「素晴らしい!」と絶賛。ちなみに、花塚さんの部署でも現在2人のスタッフがその制度を使って自身の業務の傍ら大学院に通っているそうです。
そんなブリヂストン内でAI(人工知能)・IoT(Internet of Things/モノのインターネット)の活用を推進しているのが花塚さんの部署「デジタルソリューションAI・IoT企画開発部門」です。スタッフ数は現在約30名で、その内実はもともと他部署で異なる仕事に従事していた人に加え、最近では大学でデータサイエンスを学んできた若手スタッフが徐々に増加しています。
また、社内全般的にもデジタルに長けた人材が増えているそうで、花塚さんは「我々を含め、デジタル技術に長けている人材を“デジタル人財”と独自に定義していますが、そう呼ばれる人材がグローバルで2023年末時点で約1,600人になりました」と言います。
その背景にはデジタル技術を取得した学生の積極採用と、花塚さんらが勤しむデジタル人財の育成も大きな成果を上げています。そうしたなか、花塚さんは「育成後、彼らが自分の部署に戻って活躍するまでがワンセットだと思っています。(デジタルを)学んだ人が中心となり活躍し、その人を核にしてその部署の中でのDXが進んでいく、そうした形が取れれば最高だと思っています」と理想を語ります。
◆全社員がデジタル研修をウェブで受講可能
ブリヂストンでは会社全体でデジタル人財の育成推進を掲げており、花塚さんとしても非常にやりやすい環境にあるそうですが、現在ブリヂストンにおけるデジタル人財育成コンテンツは初級・中級・上級の3つ。そのなかで、一定の知識を持ち、なおかつ意欲のある人向けの中級と上級は大学など外部の力を借りて研修プログラムを構築しています。
一方、全社員が対象となる初級は、忙しいなかでも誰もが受けることができるようウェブベースでコンテンツを配信。「我々は(初級研修のことを)“デジタル100日研修”と呼んでいるのですが、これは座学がメイン。ウェブコンテンツなので自分のペースで学べるものになっています。それもデータサイエンスだけでなく、ITの基礎的な知識やAIの一般的な知識なども含め、かなり幅広く学んでいただけるコンテンツになっています」と花塚さん。
これに笹川は「100日って“結構長いな”と思ってしまったのですが……」と率直な感想を述べますが、花塚さんいわく、受講者の多くは完遂しており、「我々の部署のメンバーが事務局という形でメンター的な立場でサポートしていますので、わからないことがあればチャットで回答するなど、しっかりとフォローすることで、ほとんどの社員が完走しています」と現状を解説します。
加えて、「『まったくデジタルに触れてこなかったので終えられるか心配』という声も多いのですが、いわゆる文系と言われる方にもわかりやすいコンテンツで、難しい数式が出てくるわけでもないので、『受けてみたらこんなものかと思った』『大変だったが完走して自信がついた』といった意見が多かったですね」とも。
さらには、「企画する側としては、アレを取り入れたい、コレを取り入れたいとコンテンツはどうしても多くなってしまいがちですが、最終的にはそれらを削ぎ落とし、必要なものだけを集めたコンテンツになっていると思います。一般的な事例だけでなく、ブリヂストン独自の過去事例も含まれているので、より身近に感じていただける内容になっていると思います」とその出来栄えに胸を張ります。
◆より自分らしく、人間らしく生きることができるように…
続いて、ブリヂストンが求めるDX(デジタルトランスフォーメーション)人材について聞いてみると、花塚さんは「これ! という1つの形があるような人材ではなく、多様性を持ったDX人材」と言います。その理由については、「例えばタイヤの材料開発や財務など自分の専門分野があり、なおかつ、もう1つの軸としてデジタル技術を身につけてもらうことで、自分の専門分野にデジタルのエッセンスがプラスされ、その人を核にしてDXが進んでいく。そういった状況がつくれると思っています」と解説します。
一方で、「高度な技術が必要となる課題も当然出てくると思います。そうしたことを解決するためには、デジタルに深く特化している人材も必要」と語りつつ、「いろいろなバリエーションを持った“デジタル人財”が必要だと思っています。そういった人材を幅広く育てていけるような研修体系を作り、なおかつ研修を終えた人たちが自部署に戻ったときにちゃんと活躍できるような環境を作っていかないといけない」と自らの使命を吐露。
最後に、日々変化する社会のなか、花塚さんが見据えている近未来のビジョンについて伺うと、「デジタルに限らず、技術というものは元来人間の生活をより豊かにし、人間らしく生きていけるように作られているものだと思うんです。技術者はみんなそういった思いを込めて作っていると思いますので、そうしたところにも貢献していきたい」と自身の今後の展望を明かします。
さらには、「我々ブリヂストンはモビリティ業界のなかで活動していますが、例えば自動運転はドライバーの負担を軽減することができます。すると、その分、人は運転以外のことに時間を費やすことができる。例えば社会貢献や家族のため、あるいは自分の趣味のため。そうしたことに時間が使えれば、より自分らしい生き方が実現できると思います。我々が提供する技術やサービスが人々の生活をより豊かにし、より自分らしく、人間らしく生きることに貢献していきたいと思っています」と語っていました。
次回8月24日(土)の放送は、全日本空輸株式会社執行役員デジタル変革室長 兼 ANAホールディングス株式会社執行役員グループCIOの加藤恭子(かとう・やすこ)さんをゲストに迎えてお届けします。ANAのデジタル戦略についてなど、貴重な話が聴けるかも!?
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8月17日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2024年8月25日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里