脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。
TOKYO FM がお送りするポッドキャストポータルサイト「TOKYO FM ポッドキャスト」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。
この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに、茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
10月4日(土)の配信では、リスナーから寄せられた“出社するときの気持ち”に関する質問に答えました。
パーソナリティの茂木健一郎
<リスナーからの質問>
私は毎回、「出社するときの“気持ち”の持ちようは自分次第」だと感じており、なるべく楽しく通勤できるように意識して楽しいことを考えています。繰り返し意識していれば、無意識になるものなのでしょうか? また、脳科学的に意識して鍛えられる部分と、鍛えられない部分があるのであれば教えていただきたいです。
<茂木の回答>
出社するとき、これから仕事ですから、なるべくポジティブに行きたいですよね。意識して楽しいことを考えるのは「正しい」!
脳の仕組みから言いますと、意識して楽しいことを考えるというような、「プライミング」(※あらかじめ受けた刺激により、その後の判断や行動が影響を受ける現象のこと)の準備をすると、確かにその楽しい気分で本番の仕事ができるということが知られています。ですから、この相談者さんのやり方というのは基本的に正しいんですね。
ご質問の「繰り返し意識していれば無意識になるものなのでしょうか?」ですが、はい、これはとても鋭い見解です。実は古来、多くの方がこのことを指摘しています。例えば、フランスの哲学者・思想家でノーベル文学賞も受賞しているアンリ・ベルクソンは、まさに「意識して習慣化したものは無意識になる」と指摘しています。
この現代の脳科学でも、最初に習慣化するまでは意識的に努力しなくてはいけないのですが、習慣化すると基本的に無意識の回路がそれを担当することが分かっています。ですから、相談者さんが言っていることは正しいです。
意識する部分というのは、大脳皮質の部分ですよね。大脳皮質で意識して、それが習慣化されたときは、大脳辺縁系と呼ばれる扁桃体(へんとうたい)や海馬(かいば)だとか、あるいは小脳というようなところが、無意識に楽しい気分というか、前向きな気分を支えてくれます。
ですから、ぜひ前頭葉(ぜんとうよう)を中心とする大脳新皮質で鍛えていただいて、それを無意識化して習慣化するのが良いでしょう。
ただ、無理をして楽しいことだけを考えようとする必要はありません。自然体が大事。場合によっては、ネガティブな感情も、それにフォーカスしてあげて、自分なりに納得するという形でケアしてあげることで、結果としてポジティブな気持ちになることができるのです。ですから、必ずしも「楽しいことばかり考えなくてはいけない」と無理する必要はないです。
繰り返しポジティブなことを考えると無意識の習慣になる、ということは正しいのですが、そこは無理をせず、自然に自分の心の中に浮かんでくる感情に向き合っていただけたらと思います。
何しろ、積み重ねがやがて無意識の自分を作っていく、これは事実です。ぜひ継続こそ力なり、継続こそポジティブ脳の作り方ということで続けて見ていただけたらと思います。
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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎