笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。5月17日(土)の放送は、ライオン株式会社 執行役員 全社デジタル戦略担当の中林紀彦(なかばやし・のりひこ)さんが登場。ライオンのDXの取り組みや、生成AIの活用法について伺いました。
(左から)中林紀彦さん、笹川友里
中林紀彦さんは2002年に日本アイ・ビー・エムに入社し、データサイエンティストとして数々の企業のデータ活用を支援。その後、オプトホールディング データサイエンスラボ副所長、SOMPOホールディングス チーフ・データサイエンティスト、ヤマトホールディングス株式会社の執行役員を歴任し、2024年4月にライオン株式会社の執行役員に就任。筑波大学大学院の客員教授およびデータサイエンティスト協会の理事も務めています。
◆“天然ミントの味”にこだわり
ライオン株式会社は、トイレタリー用品(洗剤や石けん、ハミガキなど)をはじめ、薬品、、ペット用品、化学品等を手がける日本の大手生活用品メーカーです。1891年の創業以来“習慣づくり”を通じた社会貢献に取り組み続けており、現在は「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」をパーパス(存在意義)に掲げています。
ライオンは、歯みがきや洗濯の習慣がまだ一般的でなかった時代から小学校を訪れて子どもたちに歯みがきの方法を教えたり、洗剤を使った新しい洗濯方法を広める講習会を開催。こうした習慣を生み出し、それを支える製品を提供する取り組みは今も変わらずに続いています。近年ではコロナ禍を契機に手洗いの重要性を積極的に啓発し、定着させる活動にも力を入れています。
また、ハミガキ剤で定番の香味でもある天然ミントの味にこだわり、自然由来の素材を生かしながら“ライオンの香味を実現しています。「同じ香りになるようにミントを仕入れなければいけないのですが、ワインのように年や気候で差が出るんですね。同じ品質のミントを調達するためにすごく力を入れています」と中林さんは語ります。
ハミガキ剤の香味に対するこだわりも強く、研究所では、香りを開発するためにスポイトではなく、ミントなどの精油をつまようじを使って量り取り、調合をおこなっています。「スポイトだと垂らしすぎるので、つまようじを器用に使って調合します。何気なく使っているハミガキ剤ですけども、それぐらいこだわって香味を作っています」と説明しました。
◆ライオンが掲げる中期経営計画「Vision2030 2nd STAGE」
ライオングループでは、2030年に向けた経営ビジョン「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を掲げており、2025年1月から新たな中期経営計画として「Vision2030 2nd STAGE」(2025年~2027年)を策定。「“会社の経営にデジタルをどう組み込んでいくか”について、社長をはじめとした経営陣と議論して、スタートを切ったところでもあります」と説明します。
2030年に向けたデジタル戦略の骨格において「柱に据えている“3つの戦略”があります」と中林さん。今回は、そのうちの2つ「データドリブン経営」と「生成AIの民主化」について解説いただくことに。
まず「データドリブン経営」については、経営陣がグローバルな視点で会社の現状を正確に把握していくこと。さらには、1年後、3年後の事業の姿を予測したうえで意思決定をおこなう、といった経営戦略を社内に浸透させていくことを目指しています。
続いては「生成AIの民主化」について。ライオンでは、2023年6月から社内向けに内製開発した「LION AI Chat」の提供を開始しており、中林さんいわく、全社でAI活用が活性化した結果、各部門からの具体的なニーズが生まれ、より高度な活用に発展することができているとのことで、「現在は、部門ごとに特化したAIツールや、社内の問い合わせに対応したAIシステムの開発も進行中です」といいます。
この生成AI技術は商品開発にも活用されており、例えば、これまでは商品の原料の配合に多くの時間を要していました。いまでは、AIと機械学習を活用することで、配合の最適化が迅速におこなえるようになり、なかには従来の半分の時間で試作を終えるケースも出ています。その一方で「デジタルだけでは価値を生まないので、どのように会社の戦略に組み込んでデジタルの戦略をつくり、全社で実行していくかがすごく大事」とも。
こうした取り組みの根底には、人々の習慣をデジタルとデータサイエンスで科学し、“より良い習慣づくりに貢献したい”という想いがあります。これを象徴するものとして、ライオンはデジタル戦略のスローガン「習慣を科学する」を掲げています。
最後に中林さんは、現職に就任してから1年の活動を振り返り、「少し大きなスコープで2030年を見据えて、散らばっているいろんなデータを集めながら、そのデータを活用できる状況をつくるような地ならしがかなりできてきた1年でした」と手応えを語ります。今後についても「さらに生成AIは進化していくので、それを取り込んで社内にもどんどん広めていき、生産性向上に役立つ取り組みを進めています。既にいくつか進捗も見られているかなと思います」と話していました。
次回5月24日(土)の放送は、引き続き中林紀彦さんをゲストに迎えてお届けします。「デジタル活用人材」育成の取り組みについてなど、貴重な話が聴けるかも!?
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5月17日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2025年5月25日(日) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里