笹川友里がパーソナリティを務めるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。7月25日(土)の放送は、先週に引き続きUmios(ウミオス)株式会社 取締役常務執行役員の小関仁孝(こせき・よしたか)さんが登場。日本の魚食が抱える課題やデジタル人材育成について話を伺いました。
(左から)小関仁孝さん、笹川友里
小関仁孝さんは、1991年に大洋シーフーズへ入社。1996年のマルハによる吸収合併を経て、2021年にマルハニチロ事業企画部長、2023年には執行役員 事業企画部長兼中央研究所担当、2024年には執行役員 物流ユニット長を歴任しました。2025年には常務執行役員 コーポレート部門副部門長に就任し、経営企画部、事業企画部、サステナビリティ戦略部、財務部を担当。現在は取締役常務執行役員 最高財務責任者(CFO)を務めています。
◆「Umios」に込めた企業理念
水産・食品の総合企業「Umios(ウミオス)」は、2026年3月まで「マルハニチロ」の社名で親しまれてきました。その新たな社名には、次の100年を見据えた企業としての思いが込められています。
社名の由来について、小関さんは、「社外取締役でアメリカ人の方がいらっしゃるのですが、その方が『日本の企業だったら、日本の企業らしいアイデンティティがなくていいのか』とおっしゃって。それで、日本らしさを残す必要があるということで、“海(umi)”という名前をつけるべき、という案が挙がりました」と振り返ります。
そして、“会社と地球が一体とならなければならない”という思いを込めた「one」、企業活動を通じて世界の課題解決に貢献する「solutions」という考え方を反映し、「『umi』『one』『solutions』を組み合わせた造語として、『Umios』という社名にしました」と話します。
◆水産資源の危機と魚食の未来
続いて、笹川の「水産資源の不足が懸念される未来を企業としてどのように捉えていますか?」という質問に対して、小関さんは世界の水産物生産の現状から説明します。
現在、水産庁が公表する水産白書によると、世界の水産物生産量は約2.3億トンありますが、そのうち天然資源の漁獲は約0.9億トンにとどまり、養殖による生産は約1.4億トンと、天然の漁獲を上回っています。加えて、国連食糧農業機関(FAO)の統計によると、1985年以降、天然の水産資源は増えておらず、多くの魚が持続可能な漁獲の限界に達しているとのことで、小関さんは「天然資源の魚に関しては、本当にしっかり資源管理していかないと、食べられなくなる日が来るだろうという危機感を私たちは持っています」と語ります。
そのため、Umiosでは養殖技術のさらなる発展が不可欠だと考え、日本の養殖魚の主流となっているマグロやブリ、カンパチに加え、環境負荷の少ない魚種への転換や、陸上養殖などの新技術の活用を進めることが重要だといいます。さらに、小関さんは「少し未来の話ですけれども、“持続可能なタンパク質を提供していく”というなかで、いわゆる『培養魚肉』という、生体から採取した細胞を、その後は生体を必要とせずに培養・増殖させることといった取り組みも含めて考えているところです」と先を見据えます。
また、小関さんは日本の水産物の消費量が昔に比べて減少していると指摘し、その理由の1つとして“魚の売り方”を挙げます。日本のスーパーでは、刺身や切り身が並ぶことが多いですが、自宅で調理する手間や生ごみの処理などがハードルとなっている一方で、肉は冷凍保存がしやすく、フライパンで簡単に調理できるなど、その手軽さが浸透していることから、魚よりも手に取りやすいと分析。そのため、現代のライフスタイルに合わせた提供方法への見直しが必要との考えを示します。
◆AI時代に求められる変革人材
ここからは、UmiosのDX人財について伺います。小関さんは、持続可能な社会の実現にはテクノロジーだけではなく、それを使いこなす人財の育成が欠かせないと言い、「DXによっていろんな業務を改革して“時間”をつくりましょうと。時間をつくると思考も深まってくるので、その思考が深まった結果としての価値を考えていき、それをお客さまの喜びにつなげる。こういうことをサイクルで回していける人財を育てる必要があります」と解説します。
その実現に向けて、各部署からDXリーダーを選抜し、段階的な育成プログラムを展開しています。そのなかで重視しているのは、ITスキルではなく「変革するマインド」です。自分の固定観念を見直す「越境リーダーシップ研修」を通じて意識改革を促し、その後にロジカルシンキングやAI、ローコード開発などの実践的なスキルを身につけさせ、現場で業務改革を推進できる人財を育てていきます。
AI活用にも力を入れています。小関さんによると、社内向けに独自開発した生成AIを導入し、現在では社員の約7割が日常的に利用しているといいます。また、公募制で立ち上げたAI活用の分科会には募集人数の3〜4倍もの応募が集まるなど、社員の関心の高さもうかがえます。さらに、AWS(※)が提供するAIモデルを活用し、需要予測などの高度な分析にも取り組んでいます。
※AWS…アマゾンウェブサービス(アマゾンが提供するクラウドインフラ環境)
小関さんは「今まで当たり前にやっていた仕事について『当たり前のままでいいの?』と疑問に思う人を増やさないと、会社は変わっていかないと思っています」と、変革を支える意識づくりの重要性を強調します。
◆人と地球の健康を高めるプロジェクトが進行中
最後に小関さんは、Umiosが未来に取り組むテーマとして、「魚食のリデザイン」「パーソナル・スーパーフード(完全健康食品)」という2つの構想を挙げます。これらは現在、東京大学やJR東日本とともに「地球益」の実現を目指す「プラネタリーヘルスダイエット」として挑戦しているプロジェクトです。
小関さんは、魚は健康価値が非常に高く、畜肉と比べても環境負荷の少ない優れた食材であるにもかかわらず、現代の消費者にとっては購入のハードルが高い食材になってしまっていることを指摘し、「もう1回、いろんなテクノロジーなんかも使いながら、需要を喚起できるような形に、食体験も含めてリデザインしていきたい」と力を込めます。
また、今後は“食”という文化が、よりパーソナライズされていくのではないかと推測し、「例えば、JRさんのSuicaでパーソナル・ヘルス・レコードみたいなものができるようになったときに、『今日どんなものを食べたのか?』とか『どういう健康状態なのか』といったデータを持ったうえで、食事をしようとしたときに、そのデータを読ませたら最適な食事が出せる。そういった世界が、私はそんなに遠くない時代に来るんじゃないかと思っています」と語ります。
さらには、環境に配慮した秩序ある漁獲や新しい技術によって生み出された食材を提供していくことで、「海全体のバランスも取れて、元の力を取り戻していく。つまり、人も地球も、もちろん海も健康な世界がきっと来るんじゃないか……そういう未来を次の世代のために作っていくのが、Umiosが目指すべきところなのかと思っています」と締めくくりました。
次回8月1日(土)の放送は、日清食品ホールディングス株式会社執行役員CIOグループ情報責任者の成田敏博さんをお迎えします。日清食品グループ全社をあげたデジタル変革についてなど、貴重な話が聴けるかも!?
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/