ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
7月9日(水)のテーマは「ラブブ異常人気! 転売ヤー・窃盗グループも! 日本のガチャ発祥のブラインドボックス・トイを ニューヨークのZ世代が徹底解剖 ②」。アメリカでも人気の“ガチャ商法”のグッズについて、ラボのメンバーが話し合いました。
※写真はイメージです
◆何が当たるかわからないドキドキ感が大人気!
アメリカでは、中身が見えない状態で販売されている「ブラインドボックス・トイ」のおもちゃが大流行。開けてみるまで中身がわからないというドキドキ感からZ世代の若者に人気で、なかでも「LABUBU(ラブブ)」という中国生まれのぬいぐるみが流行っており、ラブブの販売を手がけるPOP MARTのCEO は、38歳にして推定資産3兆円と、中国10位のビリオネアにまでなったという報道も話題になりました。
日本生まれの“ガチャ”や“ガチャ商法”にルーツがあると言われているブラインドボックス商法ですが、ここまでの人気ぶりとなると、やはりネガティブな批判も少なくないようです。ラボのメンバーはブラインドボックス商法の流行について、こう話します。
テオ:POP MARTって、すごくうまいやり方していると思うんだよね。「ラブブ」だけじゃなく「CRYBABY(クライベイビー)」というシリーズもあって、いろいろなラインのトイシリーズを展開している。最近ではアメリカ人のデザイナーと組んで「Peach Riot(ピーチ・ライオット)」という新しいシリーズを作っていて、これはアメリカや西洋のオーディエンスを意識している感じ。パンクっぽい女の子たちのフィギュアで、パンクファッションとか今っぽい服を着ているんだ。
だからPOP MARTのCEOがめちゃくちゃ稼いでいると聞いても驚かないよ。ガチャの仕組みをうまく使って、ものすごく広い層にアピールできているからね。今までソニーエンジェルやラブブに興味がなかったような人たちでも、ピーチ・ライオットのキャラを見て「え、これかわいい!」ってハマっていくのを実際に見ているし。
アニー:それに、最近は他の有名なIP(知的財産)とのコラボもやっていて、たとえば「アーケイン」とか「デジモン」とのコラボもやっているみたい。POP MARTの店に先々週行ったときはたくさん並んでいたのに、1週間後に行ったらもう完売していたよ!
テオ:昨日もPOP MARTに行ってきたけど、パワーパフガールズやゲーム「ワールド・オブ・ウォークラフト」とのコラボフィギュアもあって、「うそでしょ!?」って感じ。まさかそんなものまであるとはね。
しかも、全部ブラインドボックスなんだよ。小さなバッジでさえブラインドボックスに入っていて、何が出るか開けるまでわからない。あの“ガチャ”的なギャンブルの要素が、全てに詰まっているんだよね。
中国の会社POP MARTは2023年秋にアメリカ1号店をオープンし、今ではニューヨークに2軒を含む37軒を全米展開。店を頻繁にチェックしているラボのメンバーも、精力的にローカライズした商品展開やコラボの幅広さで、ブームをさらに大きくしながら次につないでいこうとする戦略に驚いていました。
こうしたブラインドボックスのおもちゃは、POP MARTとラブブによって世界中のマスマーケットが広がりました。最近ではアメリカ最大の量販店ウォルマートが、大ヒット映画シリーズ「ヒックとドラゴン」とコラボしたブラインドボックスを発売し、話題になっています。
(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab
◆転売ヤーのみならず“窃盗犯”まで!「ポケモンカード」も餌食に
一方で、これだけマーケットが広がると気になる問題も出てきます。開けるまで中身がわからない日本発祥のおもちゃで、ギャンブル要素が強いものと言えば「ポケモンカード」。このポケモンカードについても、ニューヨークの紀伊國屋書店では、とある問題が頻発しているそうです。紀伊國屋書店で働くメンバーのテオは現状についてこう話しました。
テオ:最近またポケモンカードがめちゃくちゃ人気になっていて、転売ヤーが問題になっているんだよね。転売ヤーは、ただ「買い占めて高く売れば儲かる」って考えている人たち。だから新しいカードが出るタイミングとか、店が開く時間をチェックして、誰よりも早く来て全部買おうとする。だからうちの店では、1人が買える箱数に制限をかけているんだけれども、それでもまだ大変。
実は困ったことに、このトレンドが日本発のブラインドボックス・トイのソニーエンジェルにも波及しているんだ。ソニーエンジェルを盗むために来る常習犯のグループもいて、そのうちの1人が昨日店に現れたんだ。もう顔は割れているから、「あ、また来たな」ってすぐわかったよ。
だから思い切って、その人に言ったんだ。「あなたが何者か、何しに来たかもわかっています。だからもう入店しないでください」って。そうしたらめっちゃビビって、カゴに入っていたソニーエンジェル全部その場に置き捨てて、そのまま逃げるように出ていった。そのくらい、みんなすごく大胆になっているんだよね。
ブラインドボックス商品のあまりの人気ぶりに、それを狙う転売ヤーだけでなく、窃盗にまで手を出す人もいるのだそう。アメリカでもこうした商品の高額転売は問題になっており、人気のラブブになると、定価の10~20倍の価格で売られていることもあります。
こうした転売の問題だけでなく、高いギャンブル性が若者のメンタルに与える影響を危惧する声もあり、「規制が必要なのではないか」という声も出始めています。
シェリーは「『ブラインドボックス』のおもちゃはワクワク感あふれる自己表現の手段なのか、それとも欲しいものが当たるまで際限なく買い続ける『止めたくても止められない』危険な仕組みなのか。いずれにせよ、今のZ世代の気持ちを反映した商品であることは間違いなさそうです」とコメントし、話題を締めくくりました。
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<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/