ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
今回のテーマは「NYのZ世代が感じた『トランプ支持者の変化』あの抗議デモは果たしてパラダイムシフトの前兆なのか?」。全米でおこなわれた反トランプ政権デモについて、ラボのメンバーが話し合いました。
※写真はイメージです
◆反トランプ政権デモに意味はあったのか
6月14日(現地時間)に開催された軍事パレードに合わせて、アメリカの各地では「No Kings Day(アメリカに王はいらない)」と銘打った抗議デモがおこなわれ、全米で500万人以上を動員する史上最大規模のデモとなりました。
No Kings Dayの反トランプ抗議デモは、わずかな例外を除き、とても平和的な抗議行動でした。それにもかかわらず、トランプ政権がカリフォルニアに5,000人近い州兵と海兵を派遣したことで、「言論の自由への弾圧ではないか」という恐れと反発が高まる一方です。
前回の番組では、抗議を支持するニューヨークZ世代の声をお伝えしましたが、彼らのなかにも、「こうしたデモは本当に効果があるのか」という懐疑的な声があるのは確かです。そこでラボのメンバーには、引き続きこの話題について語ってもらいました。
ミクア:「もう他にできることが何もない」と感じることがあってただただ悔しい。今、人々が唯一できることは抗議だよね。抗議活動は「何かおかしい」と感じたときに、人々が声を上げる最も大切な方法の1つでしょう。アメリカはデモが盛んなことで有名だけど、それは私たちにその権利があるからだよね。
でも、トランプがデモに対して軍隊を派遣するようなことをしてしまうと、その権利が脅かされるように感じる。抗議をすることに関して恐怖を感じるようになるからね。「逮捕されるかもしれない」「警察に連れて行かれるかもしれない」って思ってしまう。
だから、抗議をするのはとても勇気のいることだと思う。学生だって同じだよね。実際に抗議に参加した人たちは、学位を剥奪されたり、退学になったりしたからね。場合によっては逮捕や投獄、命の危険さえ考えなければならない。
アニー:トランプ自身も、「もし抗議活動をしたら、自分はその抗議者に報復することができるし、実際にそうする」というような発言をしたよね。彼はまるで、恐怖で人を支配したいかのように見える。「大規模な抗議をしたら、こういう目に遭うぞ、本当にそうなるぞ」というふうにね。それって「黙っていたほうがいい」と言われているようなものだよね。
たしかに、ネット上で彼に対して悪口を言ったとしても、それだけなら報復されないかもしれない。でも、もし本気で「彼に対して不満がある」という意思を示したいなら、実際に抗議に行くしかない。ところがその平和的な抗議行動に対して軍隊や海兵隊が動員されるなんて正直異常だよ。
ミクア:だから時々こう思ってしまう。私たちは何度も抗議をしてきたし、今も抗議をしているけれど、実際のところ政権そのものや彼らのやっていることって、結局何も変わっていないんじゃないかって。
今回のデモは、トランプ政権誕生後の他の抗議と同様、参加者の年齢層は全体的に高くなっているのが目立ちました。特に学生は大学からの罰則を恐れて参加を控える傾向が続いています。
(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab
◆身近な人たちが考えを変え始めている
「ここまでして抗議しても、何も変わらないのではないか」という懐疑心が生まれてしまうのも当然です。しかしこの後、ラボの議論は意外な方向にシフトしていきます。
メアリー:悲観的になるのも無理はないと思うよ。でも、私はこうも思うんだ。「潮目は確実に変わってきている」って。
うちの親はちょっと保守寄りで、父はかなりの共和党トランプ支持者なんだよね。でも母はそこまででもなくて、最近になって「もしかしてトランプってやばい人なのかも」って思い始めているみたいなんだ。「あの人、なんかおかしくない?」って。
それって母だけじゃないと思う。トランプに投票した人のなかにも「こんなことになるなんて思ってもいなかった」って言っている人、けっこういるよね。だからこそ、抗議ってすごく大事だと思う。
抗議があることで、「社会のなかに不満や不安が確かにある」ということが、はっきり目に見えてくる。それがなかったら、誰も何も感じていないってことになってしまう。人が集まって声を上げること、それ自体が「自分たちは同じ気持ちを抱いているんだ」っていう、連帯の証にもなるんじゃないかなって思うよ。
アニー:ここ半年くらいの間に、トランプ関連の抗議がずっと続いていることを考えると、やっぱり何かしらの変化を生み出してほしいなと思う。たとえ今すぐに効果が出なくても、もっと先の未来で何かが変わるきっかけになってくれたら、と。
もっと多くの人が団結して、「もしかしてこの人(トランプ)は違うんじゃないか?」って、疑問を抱くようになってくれたらいい。そうやって少しずつでも、「やっぱり変わらなきゃいけないのかも」っていう空気が広がっていったら、きっと希望はあるはずだよね。
テオ:大学時代の親友に、すごくいいやつなんだけど、昔はトランプのことで大喧嘩するくらい意見が食い違っていた友人がいるんだ。彼は筋金入りのトランプ支持者だったんだけど、最近久しぶりに会ったら、なんとトランプに対して本気で疑問を持ち始めているって話していて、正直びっくりだったよ。
ああいうやつですら、「もうトランプは支持できない」って言い始めるなんて。だから最近の抗議活動についても、もう少し楽観的に考えてもいいのかもしれないって思った。人々が同じ目的のために集まることって、やっぱり影響力があるんだなって。
身近なトランプ支持者が疑問を持ち始めている。抗議があったことで、「社会のなかに不満や不安が確かにある」ことが明らかになり、その影響で考えを変える人も増えてくるはずという意見が出てきました。
実際にこのデモ直後の世論調査では、トランプ支持者からの人気が最も高い移民の強制送還に関し、全米で支持と不支持が逆転、現在では不支持が上回っています。
シェリーは「『あの抗議デモは果たしてパラダイムシフトの前兆だったのか』。その答えが出るまでにはまだ時間がかかりそうですが、番組では引き続きこの動きを追っていきます」と話し、話題を締めくくりました。
<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/