モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。2月26日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「エンタメでも『DEI』見直しか。ディズニー『人種差別の注意書き』」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
アメリカのウォルト・ディズニーが、過去の人気アニメーション映画における人種差別的な表現に対する警告文を変更することが明らかになりました。日本経済新聞によると、アメリカメディアが2月13日までに報じたということです。
トランプ政権下で「DEI=「Diversity(ダイバーシティ/多様性)」「Equity(エクイティ/公平性)」「Inclusion(インクルージョン/包括性)」への反発が強まっていることに対応するとみられます。
◆「人種差別的な表現が含まれている」という注意書きがマイルドに?
吉田:塚越さん、まずは、アメリカのディズニーが「人種差別の注意書き」を変更したことについて詳しく教えてください。
塚越:例えば1953年の「ピーターパン」には、先住民の描き方や呼び方など、人種差別的なシーンがあります。現在、ディズニーの動画配信サービス「Disney+」で配信している過去作品では、こうした作品の再生前に12秒程度「この動画には人や文化に対する否定的な表現があり、こうした固定観念は当時も現代でも誤っている」といった警告文を自動で流しています。この表現は2020年、黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官に殺害されてから生じた、一連の「ブラック・ライヴズ・マター」運動を受けてから始まったものでした。
今回ディズニーは、こうした警告文を自動で流すことは止め、代わりに作品の「詳細情報」を示す別の画面で「この作品はオリジナルのままで、ステレオタイプな描写が含まれています」といった文章を表示するといった報道があります。これは2020年より前に使われていたものなので、簡単に言えば以前のやり方に戻ったということになります。表現としてもややマイルドなものになったかなと思います。
◆トランプ大統領が進める反DEI アメリカ世論はどう反応
吉田:こちらの変更の背景が「DEI」の見直しだと見なされているようですね?
塚越:そうですね。バイデン政権が推進したDEI政策ですが、トランプさんは政権発足直後にDEIを廃止するという大統領令に署名しています。
そもそもDEIは、「Diversity(多様性)」「Equity(多様性)」「Inclusion(包括性)」の略で、すべての人に公正な機会を与えて、人々が不当に偏った状況に置かれることなく、多様な背景に受容できる社会を実現させるための取り組みのことです。これだけを聞けば、納得のいく取り組みですよね。
ただ、ビッグテックと言われる大手IT企業もこのDEI見直しに寄り添う流れもあります。今回の件は決してディズニーだけでなく、アメリカの大手企業には多かれ少なかれ見受けられる「流れ」です。
ただ、さまざま企業がこうした動きについて声明を出していますが、あくまでもトランプ政権に向けた表向きのポーズと言えるのかなと思います。トランプ政権は強く反DEIを主張しているので、無視することはできません。今後数ヵ月くらいしてから、会社内で目立たない形でも引き続きDEIに取り組む企業もあれば、本当にやめていく企業もあると見えてくるのではないかと思います。
ユージ:この「DEI」について、アメリカの世論は割れていますか?
塚越:CBSニュースが1月中旬におこなった世論調査によると、DEIを「もっと推進すべきと考える人は39%」「現状維持を望む人は27%」。一方で「終了を求める人は34%」ということで、アメリカ国民の3分の1はDEIに否定的といえるわけです。ただ、これは単純に「多様性がいらない」と考えているのではなく、DEIを巡る言い争いにうんざりしている国民もいると、ウォール・ストリート・ジャーナルは指摘しています。
ユージ:ちょっと過熱気味というか、過剰に意識しすぎている部分もあったかもしれないですからね。
塚越:アメリカはそもそも人種的にも多様なわけで、常にさまざまな争いがあります。多様性は大事だけど「疲れた」と感じる方もいるのだと思います。
◆「多様性」は曖昧な言葉 再定義して建設的な議論を
ユージ:アメリカで広がりつつある「DEI」を見直す動きについて、塚越さんはどうご覧になりましたか?
塚越:賛否があるとは思います。ただ「多様性」という言葉は、言葉として今の段階で曖昧なところもあったのは事実です。「何となくいい言葉」ではなくて、細かく見て嚙み砕いていきながら(再定義し)議論する段階だと思います。多様性に配慮すると、企業の業績が上がるというデータもあります。
一方で、「DEI」という言葉から想起されるイメージが多すぎるため、アメリカでは推進派も反対派も、この言葉を巡ってさまざまな争いが起きています。特定の言葉を発するとそれだけで(人々がアレルギー的に反応して)争いが起きてしまう……と言った状態を、私は「カロリーが高い言葉」と呼んでいるのですが、これだと建設的な話ができなくなってしまいますよね。そのため違った角度から新しい言葉を作るなど、議論ができるような名称付けなども大事なのかなと思います。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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2月26日(水)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 3月6日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世