フリーアナウンサーの唐橋ユミがパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「NOEVIR Color of Life」(毎週土曜9:00~9:30)。“生きること、輝くこと、そして人生を楽しむこと”をテーマにした、トークと音楽が満載のプログラムです。各界を代表して活躍する女性ゲストが、自らの言葉でメッセージを伝えます。
今月のマンスリーゲストは、歌人・俵万智さんです。ベストセラーとなった俵さんの第1歌集「サラダ記念日」の国内外の反響、SNS時代の言葉の使い方などについて語ってくれました。
俵万智さん
1962年生まれ、大阪府出身の俵さん。早稲田大学第一文学部在学中に短歌と出会い、1987年に出版した第1歌集「サラダ記念日」はベストセラーとなり、現代短歌ブームを巻き起こします。以後、歌集「チョコレート革命」「未来のサイズ」などのほか、評伝、エッセイなど、多くの著書を出版。2023年には「紫綬褒章」を受章します。2025年4月には、新著「生きる言葉」(新潮社)を刊行しました。
◆実は「サラダ記念日」には直したいポイントがある!?
唐橋:「『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」はとても有名な一首です。38年経っていますけども、どのように感じていますか?
俵:短歌は短いのですが、時代や読者との出会いで豊かに育っていくんです。たとえば、評論家の先生は「松尾芭蕉を踏まえているね」とおっしゃって、翻訳家の先生は「シェイクスピアの“サラダデイズ”を踏まえている」と。読む人の教養で歌が高尚になるなと思いました(笑)。(最近はSNSでの「いいね」ボタンが当たり前のように使われていますが)今では“「いいね」の元祖”と言われたりするんですよ。
唐橋:本当におっしゃる通りだと思います。
俵:今は「いいね」の数を競うような風潮があると思うのですが、この歌は「たった1つのいいねで幸せになれる」という歌なんです。そんなことをSNSに書いたらバズりました(笑)。
唐橋:一方で、この短歌に納得がいっていない部分があるそうですね?
俵:そうなんです。「この味がいいね」の「じ」が濁音なのが嫌で(笑)。濁音って強そうな響きがあるので、恋の歌にはふさわしくないと感じているんです。下の句では「七月」と「サラダ」のS音を響かせる工夫をして、これはうまくいったと感じています。6月でもよかったけど、やはり7月のほうが、語感がよかったんです。
唐橋:納得はいかないけれど、どう直すか、っていうことではないんですね?
俵:直したいけど、もう動かせないですよね。だけどいまだに気になるので、そういうことを言語学者の先生に話すと大喜びされます(笑)。
唐橋:世に出てから納得いかないと思うことはあるんですか?
俵:ありますね。実際、世に出してから「直したい」と思うことはあります。でも、荒削りな勢いがよさになることもあって。(歌人の)与謝野晶子も晩年に「みだれ髪」を直しましたが、私は元の荒削りなほうが好きだと思うこともあります。
俵さんの最新著書「生きる言葉」(新潮社)は現在好評発売中です。
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10月のマンスリーゲストは、シンガーソングライター・EPOさんです。
<番組概要>
番組名:NOEVIR Color of Life
放送日時:毎週土曜 9:00~9:30
パーソナリティ:唐橋ユミ