笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。4月18日(土)の放送は、先週に引き続き日本電気株式会社(以下、NEC)執行役 副社長 兼COO テクノロジー&イノベーション担当の吉崎敏文(よしざき・としふみ)さんが登場。顔認証技術の広まりや、NEC開発のAIコア技術「cotomi」について話を伺いました。
(左から)吉崎敏文さん、笹川友里
吉崎敏文さんは外資系IT企業を経て、2019年にNECに入社し、生体認証・AI・クラウドなどのデジタル事業および変革を推進。2021年からは、プラットフォームと先端SI技術のビジネス化を主導し、戦略コンサルティング機能の新設やDXオファリングの体系化・標準化を通じて、事業モデルの高度化を実行。その後、2023年にCDO(Chief Digital Officer)、2024年に執行役副社長に就任し、全社のDX事業を「BluStellar(ブルーステラ)」として統合したビジネスモデルの変革を実施。2026年にはCOO(Chief Operating Officer)に就任し、全社の製品開発、サービス、研究、事業開発を統括しています。
◆世界で活用されるNECの顔認証技術
今回は吉崎さんに、世界50ヵ国以上で採用されている顔認証技術や、独自開発の生成AIなど、社会を変革するNECの取り組みの最前線について伺いました。
顔認証技術は、日本国内では羽田空港や成田国際空港で導入されており、チェックイン時に顔認証をおこなえば、その後は手荷物の預け入れや保安検査、搭乗ゲートまでスムーズに通過することができます。また、吉崎さんは「利用シーンは入退管理にとどまらず、おもてなしや見守り、店舗決済などにも使えますし、コンビニエンスストアなどでも、これからどんどん活用されていくと思います」と展望を語ります。
この技術は海外でも広まってきています。例えば、インドでは10億人規模の国民IDにNECの顔認証技術が使われており、「本人認証によって、正確な人口動態の把握や、成長戦略の策定ができますので、今後いろんな国で活用が進んでいくと思います」と説明します。
◆リージョン特化型AI「cotomi」を開発
続いて、NECが開発したAIコア技術「cotomi」について伺います。「cotomi」は、日本の文化や言語、制度に寄り添ったリージョン特化型のAIとして注目を集めています。
開発の背景には、グローバルAIとは異なる視点がありました。主導した吉崎さんは、2023年にスイスで開催された「ダボス会議(世界経済フォーラム)」に参加した際、マイクロソフトのCEOにAI戦略について直接問いかけたといいます。そこで、「これからのAIは、グローバルに通用するAIと、地域ごとの特性に対応したAIにわかれていく」と見解を語ってくれたそうです。
現在、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)は急速に進化し、世界中で活用が広がっています。一方で、各国の文化や慣習、法規制といったローカルな文脈までは十分にカバーしきれないという課題もあります。吉崎さんはその点に注目し、「今LLMは、グローバルでジェネラルな大規模ランゲージモデルを、ものすごい勢いで開発されているんですけど、その国々の文化とか、その国々の慣習などのレギュレーションはなかなか学べないですよね。なので、そのリージョン業務に特化したAIを開発しようと決めました」と語ります。
そのなかで、吉崎さんは日本語や日本特有の文脈を丁寧に学習させる必要性を強調し、帰国後、開発チームとともに形にしたのが「cotomi」です。企業での活用では、特に近年はセキュリティ面でのケースが高まってきており、クラウド上では扱いづらい機密情報や個人情報を含む業務において、クローズドな環境でAIを活用するケースが増えており、「cotomi」はそのニーズにも応えています。
◆AIと向き合うデジタルエシックス
ここ数年で急速に普及した生成AI。利便性への期待が高まる一方で、NECの調査では、AIについて「便利だが不安」と感じる人が3人に2人いるそうです。こうした状況のなかで注目されているのが、NECが大切にしている「デジタルエシックス」という概念です。
吉崎さんは、「AIに限らず、まだルールが定まっていない新しいテクノロジーに対して『わからないからやめよう』ではなく、『どうやって、それら新しいテクノロジーを適切に使っていくか』というのを考えていく。これをデジタルエシックスとして、体系化して考えていこうという取り組みです」と解説します。
AIの自動化・自律化が進むなかで、意思決定における倫理観の重要性は、これまで以上に高まっています。企業にとってデジタルエシックスは、単に「その技術が使えるかどうか」ではなく、「どう使うべきか」を判断するための軸となります。
さらに、吉崎さんは、「ガバナンスが制度や統制の仕組みであるのに対して、デジタルエシックスは、その土台となる価値観なんですよ。ただし、企業はこの両方が必要で、企業の社会的な信頼性とか、中長期の競争力を左右する重要な要素だと私は考えています」と強調しました。
最後に、デジタル技術がもたらす近未来の風景を伺うと、吉崎さんは、その役割が単なるツールを超えて「社会全体のOS(オペレーティングシステム)のような、なくてはならない存在になると思います」と言及。データとAIが、人間のパートナーとして意思決定を支え、ときに一部を担うことで、人はより高付加価値な業務に集中できるようになると推測します。
さらに、デジタルの技術と人間の知恵が融合することで、「これまで取り組めなかった課題も解けてくるようになる。そういった、しなやかな社会が実現したらいいなと思っています」と期待を語りました。
次回4月25日(土)の放送は、株式会社JALカード 代表取締役社長CEO 西畑智博さんをゲストに迎えてお届けします。JALカードが描くDXの今と、テクノロジーが切り開く“旅とお金の未来”について伺います。
----------------------------------------------------
この日の放送をradikoタイムフリーで聴く
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
----------------------------------------------------
<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/