脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。
TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに、茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
6月7日(土)の配信では「資格取得」に関する質問に答えました。
パーソナリティの茂木健一郎
<リスナーからの質問>
私は営業職として働いています。資格は運転免許ぐらいしかなく、将来、転職をする際に不利なのでは? と少し不安を覚え始めました。
1つの指標として、資格を持つのもアピールポイントになるとは思うのですが、茂木さんはどう思われますか?
<茂木の回答>
その気持ちはとてもわかります。脳科学においては「個性が大切」だと常にお伝えしていますけれども、個性やその人の良さ、長所ってすぐにはわからないですよね。
ですから資格というのは個性を深掘りしなくても、その方の能力や努力してきたことがわかるので、世の中ではある程度重宝されているのだと思います。
一方で、資格とはそのものに価値があるのではなく、結局のところ「勉強すること」自体に価値があるというのが、脳科学的な考え方です。
世の中にはいろいろな資格試験がありますけれども、資格を得るために勉強すること、そのなかでいろいろと自分が向上すること、成長すること、それに価値があるんです。
メッセージを拝見したところ、あなたは今、いろいろと学びたいと思っているのかな? と感じました。学ぶことによって自分がより成長していくことが実感できるならば、それは必ずしも資格ではなくてもいいのかなと思います。
僕は一応、研究者なので博士号は持っていますが、それ以外に持っている資格は普通自動車免許くらいです。「資格なんかあるのか」と言われたら「ない」と言うしかないですけれど、ただずっと勉強はしてきています。
今は営業職をされているとのことですが、世の中のことをいろいろと学ぶのはとても大事なことだと思うので、その1つのモチベーションとして資格取得があっても良いのかなと思います。
逆に、次から次へと資格を取っていく「資格マニア」みたいな人も世の中にはいますよね。その人はそれがモチベーションになっているでしょうからいいのですが、資格が必ずしもその人の生き方や働き方につながっていないケースもあって、それだとどうなのかな、と思うこともあります。
営業職は素晴らしい仕事だと思いますし、どんな仕事にも営業という側面はありますよね。企画職が企画を立てるにしても営業センスがないとできませんし、人事職でも「どういう人材を育てていきたいか」を考えるにはアピール力がないといけませんから。そうなると「営業」につながっていきますよね。将来、他の仕事をすることになるとしても、営業の仕事の経験は生きてくることだと思います。
つまるところ、学びをいかに自分のものとしていくか、自分が成長していくための1つのきっかけにするかというところが大事だと思います。こういうメッセージを書いてくださっている時点で、もう学びの意欲は十分だと思うんですよね。
これからいろいろな人生の選択の機会があるかもしれませんし、「このままでいいのだろうか」と悩むこともあるでしょう。その際に、より自分らしい選択ができる。これが脳科学的な目線で見たときの、学ぶことの意味です。その学びの過程として、1つのモチベーションとして資格取得を目指すということは、僕はいいことかなと思います。
あとは、だんだんと「資格を通して人を見る」という世の中から、「その人の人間性・人間力を見る」方向に少しずつ変わってきているような気もします。必ずしも資格にこだわらずに、自分自身の人間力を高めていくような日々を過ごしていただけたら、きっと素敵な人生、そして素敵な仕事が待っているのではないかなと思います。
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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎