ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
8月6日(水)のテーマは「日米カルチャー討論会・番外編『日本のZ世代が質問:ネット vs 海外体験 国境を越えてより良い社会を作るために役立つのはどっち?』」。日本人の高校生と、アメリカ人のZ世代が、“より良い社会の築き方”についてディスカッションをしました。
※写真はイメージです
◆国境を越えてより良い社会を作るには?
ゲストに日本人の高校生・ケント君を招き、日米のカルチャーについて討論をした「日米カルチャー討論会」。番組では複数回にわたって同コーナーの内容をお届けしましたが、今回は番外編として、番組では取り上げなかったディスカッションの内容をお伝えします。
ディスカッションの後半、ラボのメンバーに対し、高校3年生のケント君が最後にした質問が「日米のZ世代が国境を越えてより良い社会を作るために、一体どうすればいいのか?」というものでした。この質問に対して、メンバーはどのように答えたのでしょうか?
ケント:Z世代の私たちが国という枠組みを超えて、より良い国際社会のために取り組めることは何かありますか?
質問した僕の考えからまず言うと、今はSNSがあるし、僕たちは他の世代より全然つながりやすいよね。でも日本だと、政治や宗教の話ってあんまりしちゃいけない雰囲気があるし……。そうした話題についても、「もっと海外の人と話す機会があったらいいのにな」って思うんだよね。
ノエ:わかる。もっと社会的なこととか、国際的なこと、いろいろな問題について話すのが普通になってもいいと思う。なんか日本って、今の「問題」について普段から話す文化があまりない気がするんだよね。「今こういうのが流行っている」とか「これが好き」とか、そういう話はするけれど、身の回りで何か問題が起きていても、あまり深く触れないというか。海外で何か起きていても、それについて語ることって少ない気がする。
メアリー:アメリカだと、(新しい法律ができて)TikTokが禁止されそうになったときに、みんながすごい勢いで、中国の「rednote」というTikTokみたいなアプリに移動したんだよね。それがきっかけで、中国の人たちとアメリカの若者がつながりはじめたんだ。
それってけっこう大きな出来事だったし、SNSのおかげで国境みたいなものがどんどん曖昧になっている感じがする。すでに政治に関心が高い人も増えているし、いい方向に向かっているんじゃないかな。
TikTokとかでさ、よくわからないトレンドが急に世界に広がったりするじゃん。たとえば「ラブライブ!」の音源が流行ったり、インド映画の曲がメイク動画と一緒にバズったり……。世界のZ世代はそういうふうにネットを通じて、自然と文化をシェアしているんだよね。
(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab
◆「他の国から学べることはたくさんある」
「文化的にはこれだけネットでつながっているのだから、社会やさまざまな問題についても、日本人はもっと世界の人とつながって話せばいいのに」という意見が出てきた一方で、“ネット上の関わりだけでは不十分”という意見も出ました。この意見を述べたのは、高校時代からアメリカに留学し、そのまま永住している日本人のヒカルです。
ヒカル:一番手っ取り早いのは、もうマジで日本から出ちゃうことだと思う。ネットのおかげで国境みたいなものはだいぶなくなってきた。でも日本って、なんかもう1枚すごく分厚い壁があるような気がするんだよね。それを破らないとダメっていうか。
ノエ:実際に日本を出てみて初めて、「あ、日本ってこんなに閉じていたんだ」ってわかるんじゃない?
ミクア:日本には多様性が少ないから、外に出ていかないと他のカルチャーは体験できないものね。でもそれを言うなら、アメリカ人も、もっと海外に行くべきだと思う。私はニューヨークに住んでいるから、周りにいろいろな国の人がいて、自然といろいろな文化に触れている感じだけど、アメリカのほとんどの場所は違う。外に出て「世界にはいろいろな生き方がある」って実感してほしい。日本もアメリカも、他の国から学べることってたくさんあると思うんだよね。
メアリー:海外に行くと、その国の人たちがどんなふうに生きているか、どう日常を楽しんでいるかが、すごくよくわかる。それを知ると、「まだ希望はあるな」って思えることもある。
例えばアメリカでは、「どんなに大変でも頑張り続けるのが美徳」っていう“grind culture”があるじゃない。「一生懸命働いても報われないのは当たり前」みたいな考え方。正直あれ、ほんと嫌い。
こうした意見が飛び出すなか、口を開いたのは、現在フランスで暮らしているメンバーのノエでした。
ノエ:それだよね。アメリカからフランスに来たときは、超カルチャーショックだったよ。フランスでは「そんなにガツガツ働かなくてもいいじゃん」って感じで、みんな適度に稼ぎながらのんびり生きているんだ。
たとえば川沿いで友達とビールを飲んで、のんびり時間を過ごしていたりするし。僕なんて週3日しか働いていないのに、週5日分の最低賃金はもらっているし、めっちゃ余裕ある。週4日は自由で外食もできるし、好きなものも買えるし、医療費はタダ。最高だよ。
止まらない物価高騰に喘ぎ、生活を切り詰める人が続出しているアメリカ。「報われなかったとしても、自己研鑽を続けるのは当たり前」という自己犠牲的な努力至上主義(grind culture)が浸透しているため、生活苦でも人々はなんとか工夫して日々を生きています。
一方でアメリカを出てフランスで働き始めたノエは、フランスの社会保障制度や現地の人々の労働に対する価値観などにカルチャーショックを受けたと話します。「生きるためには必死に働きすぎる必要はない」と知り、「アメリカを出て良かった」と思っているそう。
もちろん、どの国にも長所・短所は存在します。しかし、閉じた社会の外側を知ることで視野が広がり、変化をもたらす一歩につながることも確かです。シェリーは「世界のZ世代が今後どうつながっていくかはわかりませんが、今回の話で、私たち大人世代が想像できないような未来が広がっている、そんな希望が持てると感じました」と語り、話題を締めくくりました。
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<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/