UNIVERSITY of CREATIVITY(UoC)の近藤ヒデノリ(Hide)と平井美紗(Misa)がお届けするinterfmの番組「UoC Mandala Radio」。クリエイターに“ワクワクする社会創造の「種」を聞く”というテーマで、毎回さまざまな領域で社会創造をおこなっているゲストを招き、未来に向けた創造やアクションについて語らいます。
8月24日(水)の放送ではアウトドアブランド・Snow Peak代表取締役 社長執行役員の山井梨沙(やまい・りさ)さんがゲストに登場。自然から学んだことや著書の内容について語ってくれました。

(左から)Misa、山井梨沙さん、Hide
山井梨沙さんは、2020年、32歳でSnow Peakの3代目社長に就任。ファッションデザイナーとしての経験を活かしてアパレルラインを構築、日本に新しいアウトドアカルチャーを生み出しました。他にも、地方創生、体験事業を立ち上げるなど、ライフバリューを生み出すブランドとしての価値を育んでいます。
◆自然のなかで主体性を学んだ
Hide:山井さんの著書「FIELDWORK―野生と共生―」(マガジンハウス)を読んで、とても破天荒な方だなとも思ったんですが(笑)、芯にある思想にめちゃくちゃ共感しました。自分も今、サステナビリティと創造性の研究をしているなかで、体や自然のことを意識して何かを作ることがすごく大事だなと思いましたね。
山井さんの考える野生と共生は、創造性とすごく繋がる気がしています。山井さんは子どもの頃、義務教育よりもキャンプで育ったと本に書かれていましたね。山井さんにとって、野生と自然の価値はどういうところにありますか?
山井:自然ってけっこう心地いいものといいますか、現代社会においては人間の癒しってところがすごく大きいと思います。私の場合はそういう側面と、「自然に身を任せていたら死ぬ」という、自分のなかの危機管理能力を働かせて先読みするという側面がありました。両側面を自然から教わって、今の自分を形成しているところはありますね。
Hide:癒しの部分と危険な部分ですね。
山井:そうですね。本にも書いたんですけども、小さい頃から規律に縛られるのが苦手だったんですよ(笑)。
Hide:学校とかにも行きたくない、みたいな(笑)。
山井:そうなんですよ。小学校も行ったり行かなかったりだったんですけど、そんななかでデザイナーを経て社長になりました。それができたのって、自然のなかで考えて行動したり先読みするっていう“主体性”が培われたのが、すごく大きいなって感じますね。
Hide:そういうことをテーマに、養老孟司さんとかいろんな方を呼んで「Snow Peak LIFE EXPO」というトークセッションをやっていたそうですね。社会人ではなく、「地球人として、つながりたい。」というテーマがすごくいいなと思いました。
社会の周りには地球があるっていうことを改めて思い起こさせるというか。トークセッションの思いとか、実際にやってみた感想をお聞きしたいです。
山井:「Snow Peak LIFE EXPO」は、Snow Peakの周りにいるBtoB、BtoCのステークホルダーのみなさまを一同に招いて、一緒に未来を共有して、一緒に未来を作っていこうというのが趣旨なんですね。
社会人と地球人というキーワードが出たのも、街と自然がすごく分断されているからなんです。同じように、経済活動をしていく上で、職種、人種、宗教、いろんなカテゴライズで分断が起こっていますよね。
Misa:たしかに。
山井:一概に何が悪いってことではないと思うんですよ。一度自然というフィールドに身を置いて、そこに生きる地球人という考え方で物事を捉えてみたら、「大したことではないんじゃないか」と思ったんです。極論なんですけど、そこまで立ち返ってしまいました(笑)。
我々は自然の恵みによって成り立っていますし、資源によって生活が豊かになっていますよね。地球で生活する人として何をしていきましょう、という話まで一度掘り下げる必要があるんじゃないかと思い、今年のテーマを決めました。
社会人だったら人間中心に(物事を考えるように)なるかもしれないけども、地球人だったら自分に関わる人とベースにある地球、自然まで視野に入ってくるんじゃないかという仮説でセッションをおこなわせていただきました。
◆人間が“火”を求める理由
Hide:「経営は、焚き火のように Snow Peak飛躍の源泉」(日経BP)というタイトルの本を出されていますけども、経営のなかでも、焚火の感じとか自然の感覚を活かしているということですか?
山井:人間のクリエイティブの根源は火だって、私はすごく感じているんですね。キャンプの醍醐味イコール人間が営む上でとても大事な要素っていうのが火なので、みんなキャンプで焚火を囲むんじゃないですかね。
Hide:焚火が一番楽しいみたいな感じってありますよね(笑)。
山井:(笑)。人間が根源的に火を見たいっていうのは、そういうところから来ているんだろうなって思います。Snow Peakの仕事をしていく上でも、日常的に社員と一緒に焚火を囲みます。役員で“井戸端会議”なるミーティングをしているんですが、(本社のある)新潟で開催するときは実際に焚火を囲んでやっていますから。
Misa:素敵!
◆都会には“野生”が足りない?
山井:最近、感じることがあるんです。以前は現代アートを見ると、直感的に得るものがあったんですが、最近は説明を聞かないとわからないです。なんでもかんでも言語化、記号化されていっているのが要因ではないか、と危機感を覚えますね。
Misa:観る側の感性が鈍っているんですかね?
山井:それは絶対あると思います。
Hide:いわゆる“言語脳”に侵されているんですかね。頭で理解しようとして、わかる、わからないで判断しちゃう。
Misa:モノに説明がされていて、それに人が納得して対価を払うっていう行動パターンが染みついていて、そのモノに対して、いいか、わるいかの判断がつかなくなっちゃっているんじゃないですかね。
山井:食やレストランについても感じますね。事前の評価や評判を気にするあまり、もしかしたら情報にお金を払っているんじゃないかって錯覚しますよね。
Hide:お店の商品やサービスのストーリーとかに(笑)。
山井:言語化しなくても、自分がいいと思えるモノが減っている感じがしますね。
Hide:山井さんの著書に「野生が弱っている」という記述がありましたが、感じることよりも考えることが先にきて、感じる力が弱まっているんでしょうね。また、感じる力はあるのに表現する場所がないために、本当は感じているのに無感覚になってしまっているっていうことも要因のひとつかもしれないですね。
山井:クリエイティビティというのは自らの感覚を頼りにおこなうものですが、当然その中には失敗もあります。でも、自分で軌道修正をしながらたどり着くクセといいますか、ニオイみたいなものがあるんじゃないかなと思います。それこそ言語化できないものです。そういった感覚を取り戻すための営みがキャンプであったり、自然との触れ合いであったりするのではないでしょうか。
Hide:都会で暮らしながらも野生に触れられたり、焚き火が出来たりといった、そういったライフスタイルに変えられるといいかもしれないですね。
◆“違和感”をインプットして社会創造を生み出す
Misa:それでは最後に番組恒例の質問に答えていただきます。山井さんにとってワクワクする社会創造のタネは何ですか?
山井:一見ワクワクしなさそうなワードなんですけど、私にとってのタネは「違和感」なんですね。自分と真逆のものだったり、自分の正義感と当てはまらないものとかに遭遇したときに、すごくワクワクするんですよ。人やプロダクト、製品に対して、悪い意味で言うと「なんでこうなっちゃったんだろう」ってところから考えます。
Hide:改良の余地があるってことですね。
山井:そうなんです。「もっとよくしたい」って気持ちが、自分のなかでの原動力になっています。もしかしたら、違和感のアンテナが野生的かもしれないです。
Misa:なるほど。
Hide:(本社のある新潟から)東京に来ても、何かしらに触れて違和感のインプットをしている?
山井:そうですね。人間関係もそうで、「なんでこんな言い方をしてくるんだろう」と考えることによって、自分と全然性格の違う人の理解が深まっていくんですよ。違和感と向き合うことによって、自分自身の視野も広がります。気づけば、周りの人たちもよくなっていくみたいなところが、自分の仕事のタネですね。
次回8月31日(水)は、日本をはじめ世界中の厳選された最新のサステナブルな情報を届けるELEMINISTの創設者、深本南さんがゲストに登場します。お楽しみに!
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<番組概要>
番組名:UoC Mandala Radio
放送日時:毎週水曜23:00-23:30
パーソナリティ:近藤ヒデノリ(Hide)、平井美紗(Misa)
番組Webサイト:
hhttps://www.interfm.co.jp/mandala