笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「DIGITAL VORN Future Pix」。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。9月17日(土)の放送は、N.Avenue株式会社 CEOの神本侑季(かみもと・ゆき)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)笹川友里、神本侑季さん
神本さんは、2013年にヤフー株式会社に入社。「Yahoo!ニュース」を中心にメディア・広告のビジネス開発に従事した後、海外のテックベンチャー企業とともに新規事業立ち上げを担当。グループの投資ファンドであるZコーポレーション株式会社にて、ブロックチェーン領域のリサーチや事業開発に従事。2018年より、N.Avenue(エヌアベニュー)の立ち上げを担い、代表取締役社長に就任しました。
◆「CoinDesk」の公式日本版を運営
メディア事業を核とするN.Avenueは、暗号資産、ブロックチェーン(分散型台帳技術と呼ばれる技術の1つ)領域における世界有数のメディア「CoinDesk(コインデスク)」の日本における独占ライセンスを有し、ニュースメディア「coindesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)」を通した情報発信を主軸としながら、国内最大級のブロックチェーンカンファレンス「btokyo(ビートウキョウ)」の主催なども手がけています。
「coindesk JAPAN」では、国内外のデジタル資産に関する最新ニュースをはじめ、ビットコインやイーサリアムなど主要暗号資産(仮想通貨)のチャートや銘柄リスト、国内取引所へのリンクなども掲載していますが、ひと口にデジタル資産と言っても、その領域はさまざまで幅広いため、神本さんは「(それらの情報を知りたい人が)系統的にわかるような場所を目指している」と声を大にします。
◆「N.Avenue」起業当初のブロックチェーン領域を回顧
神本さんが、Zコーポレーションでブロックチェーン領域のリサーチに携わるようになった2018年当時は、まだWeb3という表現(ブロックチェーン技術によって構築される次世代の分散型インターネットの総称)も一般的ではなかったそうで、「NFTも技術的にはあったが、それほど取りざたされていたわけではなかった。ただ、インターネットの次に来るものとして、ブロックチェーン技術がパラダイムシフト(価値観が劇的に変化すること)を起こすんじゃないかとは言われていたので、そういうアンテナを張り出した時期だった」と振り返ります。
また、N.Avenueを立ち上げた2018年といえば、仮想通貨取引所「Coincheck(コインチェック)」が外部からハッキング攻撃を受け、約580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が盗難された“コインチェック事件”が大きく報じられたこともあり、「当時の仮想通貨は“怪しい”“怖い”といったイメージがあった」と神本さん。
しかし、ブロックチェーン領域は大きな可能性を秘めていたため、「金融市場としてしっかり育てていくためには情報がしっかりしていないといけないので、そこから取り組み始めた」と起業当初を回顧。その後、Facebook(現:Meta)が仮想通貨「Libra(リブラ)」の発行を打ち出し(※現在は断念)、中国もデジタル人民元を打ち出したことで「そこで潮目が大きく変わった」と言います。
その後、コロナ禍での金融緩和によって「機関投資家や事業会社が暗号資産に投資するようになり、ほかの金融資産と似通った1つの資産クラスとして認められ始め、そこに技術とNFTやDefiのようなアプリケーションが追いついてきた。さらに、Web3というコンセプトも出てきたことで、“怪しい”というイメージから“大きなイノベーション(新機軸・革新)”として一気にメインストリーム(主流)へと変わっていった」とここ数年の流れを解説。
そうした流れを汲んで、N.Avenueでは「価値革命時代の地図とコンパスを作る」というミッションのもと、信頼性の高い情報発信に努め「一人ひとりに向けて適切なパス(通り道)をしっかり作っていきたい」と思いを語ります。
◆N.Avenueが見据えるビジョン
N.Avenueを起業する前の2017年4月、世界で初めて日本が仮想通貨を法律で定めたこともあって、「当時は(世界と比べても)すごく進んでいた」と神本さん。しかし、2018年のコインチェック事件を受けて規制を強化したことで、「事業者が挑戦しづらく、海外からの事業者も参入しづらくなり、投資の観点からも“ほかの金融資産よりも暗号資産を選ぶ”というモチベーションになりづらいなど、締めつけがどんどん進んでいってしまった」と言います。
さらに、起業家として知られる渡辺創太(わたなべ・そうた)さんがシンガポールに移住するなど「優秀な若い人材が海外に流れてしまっている」と神本さん。それは人材だけでなく、投資をするにも海外のサービスを利用するなど、資金の流出も顕著に……。
そこで、「これまでなかった動きとして、政府が自ら『Web3を日本でリードしていくんだ』と宣言するようになってきた」と説明。岸田内閣が示した「骨太の方針」「新しい資本主義」の実行計画においても、Web3推進に向けた環境の整備、そして、海外流出の理由の1つにもなっている税制に関する改正にも取り組んでいくことが盛り込まれており、「ここから法律を変えていくのは時間のかかることだが、これまで政府が表立って宣言することはなかったので、ポジティブな姿勢で動いてくれてうれしい」と評します。
最後に神本さんは、ここ1~2年で可能性を感じていることとして「ゲームは絶対にくる」と明言。
「やっとアプリケーションのレイヤー(階層)というか、コンテンツを含めたマス(大衆)向けのものが作れるようになってきている。これから(ゲームをはじめとするアプリやコンテンツが)作られていく俎上(そじょう)が、NFTなどいろいろなもので整ってきていることから考えると、この1~2年でWeb3やNFTを意識しないユーザーが入ってくるチャンスじゃないか」と予見。ただ、進化のスピードがとても速い業界であるがゆえに「我々もそこに追いついていかなければならない」と力を込めていました。
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先月からの特集企画として、Web3に取り組む起業家、アーティスト、街づくりの実践者らに直接インタビューをする「Web3のフロントランナーに聞く」を開催。笹川友里とゲストの他に、経済コンテンツメディア「PIVOT」チーフ・グローバルエディターの竹下隆一郎が加わり、収録では聴き足りなかったこと、より深掘りしたかったことを追加で質問。そのトークの模様をPIVOTのアプリや公式YouTubeで配信しています。
次回9月24日(土)の放送は、Thirdverse CEO、そしてフィナンシェCEOでもある國光宏尚(くにみつ・ひろなお)さんをゲストに迎えてお届けします。VRゲーム、ブロックチェーンゲームの開発を手がける國光さんに、ゲーム市場のことや、Web3によって暮らしや働き方がどう変わっていくかなど、貴重な話が聴けるかも!? どうぞお楽しみに!
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聴取期限 2022年9月25日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/