放送作家・脚本家の小山薫堂とフリーアナウンサーの宇賀なつみがパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「日本郵便 SUNDAY’S POST」(毎週日曜15:00~15:50)。今回の放送は、バンドネオン奏者の小松亮太さんをゲストに迎えて、お届けしました。
公開収録の模様。(左から)パーソナリティの宇賀なつみ、小松亮太さん、小山薫堂
◆なかなかお目にかかれないプロのバンドネオン奏者
4月5日(日)、東京・高輪ゲートウェイシティに3月28日(土)にオープンしたばかりの複合文化施設「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」にて、番組の公開収録がおこなわれました。新たな文化発信拠点として注目される会場には多くの観客が集まり、特別な空気のなかでトークと演奏が繰り広げられました。ゲストとして登場したのは、世界的に活躍するバンドネオン奏者・小松亮太さんです。
東京都出身の小松さんは、タンゴ演奏家の両親のもとに生まれ育ちました。1998年のCDデビュー以降、国内外で活動を重ね、カーネギーホールやアルゼンチン・ブエノスアイレスなどでも公演を実現。アルバム「ライブ・イン・TOKYO〜2002」はアルゼンチンで高く評価され、現地の音楽機関から表彰を受けるなど、その実力は国際的にも認められ、2015年には日本レコード大賞 優秀アルバム賞を受賞しました。5月23日(土)には、静岡県・三島市民文化会館ゆぅゆぅホールにて「小松亮太アルゼンチン・タンゴ コンサート~濃密なアンサンブルで贈るタンゴの名作プログラム~」を開催予定です。
番組ではまず、バンドネオンという楽器の希少性について語られました。現在、プロとして活動する奏者は日本・韓国・台湾を合わせても「全部で20人くらいにはなったのかな」といい、「だいぶ増えた」としつつも依然として限られた存在です。一方で、日本では戦前から奏者が存在し、「僕の前の世代までを合わせると、90人近くいたんですよ」と明かします。
1960年代にビートルズが来日し、ロックがブームになった影響で、アコースティック音楽は次第に聴かれにくくなっていきました。そうした流れのなかで、バンドネオン奏者はタンゴ以外に仕事の場がほとんどなく、活動の幅が限られていきます。その結果、1980年代頃にはバンドネオン奏者の数は大きく減少し、もっとも少ない時期には、国内でわずか5人ほどという状況にまで落ち込んでいたといいます。
小松さんがバンドネオンに出会ったのは1987年、14歳のときでした。両親がバンドネオン奏者を探していたなかで、アコーディオン奏者が挑戦すると名乗りを上げたのを受けて(親が)バンドネオンを購入。しかしながら、手を挙げたアコーディオン奏者が挑戦を断念したことで楽器が自宅へと戻り、自分が手に取る機会が生まれたといいます。
「当時は中学2年で暇だったので弾き始めました。そうしたら周りの大人たちから『いま、弾いている時点で日本一だから。演奏者がいないから頑張ってみなよ』と言われたんです」と笑顔で振り返ります。これまでさまざまな楽器に触れてきた小松さんでしたが、どれもしっくりこなかったといいます。「バンドネオンが目の前に現れたので、頑張ってみようと思いました」と決意したそうです。
小松亮太さん
◆アコーディオンとは似て異なるバンドネオン
アコーディオンとの違いについて、小松さんは「そもそもバンドネオンの仲間じゃない」とし、イギリスの伝統音楽で使われる蛇腹楽器に近い存在だと説明します。「共通するのは蛇腹で空気を送り込んで音を鳴らすところだけ。びっくりするぐらい関係ないんです」と強調します。そのため自身も「(アコーディオンは)まったくできません。ピアノのような鍵盤がダメなので鍵盤ハーモニカも弾けません!」と語り、会場の笑いを誘いました。
さらに、タンゴの位置づけについても言及。ブエノスアイレスでは自国の音楽として親しまれている一方、地方では「タンゴって音楽があるよね」という程度の認識にとどまることも多く、「タンゴを知らないアルゼンチン人のほうがずっと多い」と語ります。また、隣国ウルグアイの首都モンテビデオでもタンゴが演奏されていることに触れ、「ブエノスアイレスとモンテビデオが向かい合った形でタンゴをやっている」と、その広がりを説明しました。
番組のテーマである「手紙」にちなみ、小松さんは、2019年に亡くなった師匠のカーチョ・ジャンニーニへ宛てた手紙を用意しました。小松さんは「本当の隠れた天才だったんですよ。彼への思い出と、今でも尊敬しているという気持ちを込めて、読み上げたいと思います」と語り、静かに言葉を紡ぎます。公開収録ではタンゴの生演奏も披露され、会場はバンドネオンの深く豊かな音色に包まれました。
<番組概要>
番組名:日本郵便 SUNDAY'S POST
放送日時:毎週日曜 15:00~15:50
パーソナリティ:小山薫堂、宇賀なつみ
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/post/
番組公式X:@sundayspost1