アーティストの坂本美雨がお届けするTOKYO FM「坂本美雨のディアフレンズ」。9月5日(月)、9月6日(火)の放送ゲストは、女優・山口智子さん。10年以上にわたってライフワークとして取り組んでいるプロジェクトをまとめた書籍「LISTEN.」(生きのびるブックス)を、8月26日(金)に刊行しました。9月5日(月)の放送では「LISTEN.」の活動と、同著について語ってくれました。
山口智子さん、坂本美雨
数々のドラマや映画、CMで活躍する山口さん。2010年からは世界各地を飛び回り、民族音楽を収録・撮影して伝えるプロジェクト「LISTEN.」をライフワークとして活動しています。
8月に書籍化された「LISTEN.」には、10年にわたって巡った26ヵ国の250を越える曲を収録。全636ページにわたり、世界の美しい風景や、その土地で生きる人々の姿を捉えた写真を掲載しています。
◆継承され続けている音楽は“カッコいい”
坂本:これまで、「LISTEN.」プロジェクトで訪れたのは10年間で26ヵ国。行きたい場所はチームで話し合われるんですか?
山口:「LISTEN.」は、私とアメリカ人の共同制作者のほぼ2人で作ってきました。「音楽を知りたい」と思ったら1つの扉が開き、「ちょっと怖いけど行ってみよう」と(その思いが)背中を押してくれる。それが音楽への興味、好奇心。
プロジェクトを始めた10年前は、CDで情報を得ることが多かったので、知らない国に行くと、まずはCD屋さんで大量のCDを買い込みます。そのなかから、心から「好き」と思えるものを選んでいって、そこにつながるには、どこの誰に会いに行ったらいいかを調べるんです。
坂本:好きになったミュージシャンを訪ねる?
山口:訪ねることもあります。ほぼ素人なので、怖いもの知らずな部分を武器にさせていただきました(笑)。
坂本:その国の伝統的なものを求めて行かれるんですか?
山口:そういうカテゴリ分けをしている意識は、自分のなかではまったくなくて。自分にとって“カッコいいもの”っていうのがまず大事ですね(笑)。“何にドキドキしてときめくか”だけを追いかけていたら、結果として、その土地ならではの民族音楽でした。
カッコいいもの基準は、人々の暮らしや自然環境のなかから全部培われて育まれるので、その彩り自体も素晴らしいんです。そんな素晴らしいものは、1つの世代ではなくならない。必ず次の世代へと手渡されていく。10代、20代、100代ぐらいまで受け継がれているものって、1つの世代じゃ太刀打ちできないぐらいカッコいいんですよね。
坂本:本には「時間が必要なんだ」と書かれていらっしゃったのが印象的でした。
山口:時間のすごさですよね。「時間は、かかるものはかかるし、かけるべきものはかけるべきだ」っていうことを教えていただきましたよね。
坂本:そう思うと、自分はちっぽけだなあって感じちゃいますね。
山口:受け止めたものを自分の人生に色付けしたら、次に手渡していくのは私たちの役目だもんね。
坂本:「手渡す価値のあるものを追い求めて、何か1つでも掴んで去らなきゃ」と思わされました。
山口:私はよく「地球滞在時間」と言うのですが、私たちの地球滞在時間は限られているので、その時間に感じまくって、自分ならではの個性で味付けして手渡したい。次の生命体の栄養にしてもらいたいね。
坂本:本当ですね。
◆「LISTEN.」プロジェクト始動の地
坂本:「LISTEN.」プロジェクトでは、1つのテーマとして「未来に伝えたい地球の美しい音を収めたタイムカプセル」を掲げられています。いろいろな年代のいろんな国の音が収められていますが、特に衝撃的だった土地の音楽は何でしたか? 土地のすごさと、音楽のすごさは違うかもしれませんが……。
山口:音楽のすごさは、やっぱり“生きる力”をくれること。私たちは食べたり水を飲んだりして、エネルギーをいただいて生きている。それと同じように、音楽からも力をいただいて生き抜いていることを、もうちょっと気付いてもいいかな、って思います。
音の力というのは、世界中を回ってものすごく強烈に感じました。特に過酷な歴史や、とても大変な境遇のなかで開花した音楽は、凄まじく素敵なものが残っているんです。「音楽があったからこそ、巨大な波を乗り越えていけたんだな」と強烈に感じる場面がたくさんありました。
それを強く感じたものの1つは、バルカン・ブラス(注:ヨーロッパ、バルカン半島の東欧諸国を中心に独自の音楽性を持つブラスバンド形態)です。
バルカン半島は、紛争や戦いなどがある過酷な土地です。そのなかで、バルカン・ブラスバンドという、大人になるには男として管楽器を演奏できなきゃいけない土壌があって。少年たちは小さい頃から毎日(楽器を)吹きながら育って、大人たちから手渡される音楽を、むしゃむしゃ食べるように体に蓄えるんです。「また明日生きていくぞ」というパワーに溢れた土地だと強烈に感じました。
「LISTEN.」の最初(第1章)は「東と西が出会う地」というシンボリックな場所でして、ハンガリーの東から始まっているんです。カメラマンなどのスタッフも、ずっとハンガリーのブタペストに住んでいるんですよ。
坂本:そうなんですね!
山口:少数精鋭の5、6人のスタッフと一緒に、ずっとやってきました。ハンガリー(の人たち)は「自分のルーツは東にある」のを、とても誇りに思ってくれているんです。だから、私たち日本人が行くとすごく歓迎してくれました。
(ハンガリーは)東洋的な歌や文化、騎馬民族が東から西へ向かっていく歩みとともに進んでいったリズムが込められた民謡、歌、ダンスが残っていて、それが西洋の貴族の世界で育まれたりしながら、そのなかで花開くものが生まれる。ハンガリーって不思議な地域なんです。そこから「LISTEN.」が始まっているんですよね。
坂本:遠いと思っていた人たちと音楽でつながっているなんて。
山口:世界は本当に果てしないし、心に翼をもらったように広がりますよね。「地球人で良かった」って思える。
▼「LISTEN.」刊行記念 書店トークイベント開催決定!▼
9月28日(水)19:00から、東京・「代官山 蔦屋書店」にて「第2弾『結束の宴』」を開催します。トークイベント模様は、オンラインでの配信も予定しています(1週間のアーカイブ期間あり)。詳細は公式サイトをご確認ください。
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来週のゲストは、9月26日(月)LE VELVETS 佐藤隆紀さん、27日(火)ホフディラン 小宮山雄飛さん、28日(水)渡辺貞夫さん、29日(木)満島ひかりさんです。どうぞお楽しみに!
<番組概要>
番組名:坂本美雨のディアフレンズ
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時:毎週月~木曜11:00~11:30
パーソナリティ:坂本美雨
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/dear/