FROGMANと花奈澪がパーソナリティをつとめる、TOKYO FMで放送中の「鷹の爪団の人工知能ちょっと来い!~AIを使って世界征服じゃ!~」。AIのエキスパートや、クリエイター、アーティストなどをゲストに迎え、エンターテインメントにおけるAIの面白さや可能性を掘り下げていく番組です。
今回の放送は、ゲストに京都芸術大学附属高等学校・じぶんみらい科で教員を務める野中孝利先生が登場。教育現場においてどのようにAIを活用しているのか、また今後の展望などについてお話を伺いました。
(左から)FROGMAN、野中孝利さん、花奈澪
野中先生は25年間、小学校で子どもたちを教えてこられ、現在は高校の現場でAIやテクノロジーをどう学びに活かせるかを模索中。生徒と一緒にこれからの学びの形を考える、AI時代の教育を見つめる探究者です。
◆「じぶんみらい科」ならではの特色とは?
FROGMAN:まず京都芸術大学附属高等学校の「じぶんみらい科」とは、どういう科なのかを簡単に教えていただけますか?
野中:京都芸術大学附属高等学校には、これまで「新普通科」というものがあったんですけれど、全国のみんなが学べるようにということで「じぶんみらい科」が作られました。“創造力”と“想像力”を理念とした教育活動を通じて自己効力感を育み、自己の未来に対して自信を持ってチャレンジできる生徒さんの育成を目的としています。全国のみなさんがオンラインで学ぶための単位制・通信制の高校です。
FROGMAN:京都芸術大学附属だけあって、油絵とかイラストとか、けっこうアート系の授業をやられるんですか?
野中:美術系の高校ではなく、通信制・普通科の学校になっています。
FROGMAN:じゃあ美術が得意とか絵が上手とか、そういうことじゃなくても別にいいってことなんですね。
野中:はい、もちろんなんですけど、やっぱり美術が好きなお子さんがたくさん入学されていますね。
FROGMAN:「じぶんみらい科」は、今年度開設ということですよね。
花奈:1年目はどうですか?
野中:もう本当にどこから始めていいのか分からない状態だったんですけど、やっぱり生徒さんから自分のペースに合わせて学んでいけることを非常にうれしく感じているという声が直接聞けて、本当に励みになっていますね。
先日も新普通科のほうで文化祭を開催したのですが、じぶんみらい科もホームページ上や作品販売で参加させていただいたんです。そこでのじぶんみらい科の紹介のときにも、「自分自身で学べる」「先生やクラスメイトに無理なことを強制されることがないので、自分の気持ちに正直になれる」「先生方が優しくて、オンラインでもほどよい距離感で付き合っていける」などがいい点として挙がっていて、来年度も生徒さんが来ていただけたら嬉しいなと思っています。
FROGMAN:コロナ禍を経てから、けっこう通信制の高校を選ぶ人たちも増えているじゃないですか。
野中:これまで通信制を選ぶ人は11人に1人だったのが、だんだん10人に1人に近づいてきています。たぶん、この選択も当たり前になってくるのだと思います。
FROGMAN:通信制の学校があるなら、全国のいろいろな学びができるんだよね。もっとこうした流れが進めばいいなと思います。
野中:そうなんです。じぶんみらい科は都市部だけではなく、全国のいろいろなところからどこでも学べる学科なんです。年に2回スクーリングがありますが、旅行のついでにちょっと来てもらって対面して、その他のときは自由に勉強してもらえるのがいいのかなと思っています。
FROGMAN:スクーリングで京都に行くとなると、ついでに観光もできちゃうからいいよね。
花奈:修学旅行がてら、みたいな気持ちにもなりますよね。
◆AIやデジタルツールに触れることで広がる可能性
花奈:「Suno」(音楽生成AI)を使った授業をされたと聞いて気になったのですが、どんな授業をされたのですか?
野中:何か生徒さんとつながれるような機会がないかなと思っていて、オンライン学校行事をやろうということになったんです。そのときに「Suno」を使って何かできないかと思い、授業をおこないました。
花奈:みんながそれぞれ作った曲を発表するみたいな感じですか?
野中:そうなんです。簡単なプロンプトで作曲できて、生徒さんも「すごい」「面白い」と言っていましたね。とにかく一緒にやっていた教職員が盛り上がっていて。
FROGMAN:いやぁ、でも教職員の方も盛り上がりますよね。楽器をいじったこともなければメロディーを作れない人でも曲が作れちゃうというのは。
花奈:これをきっかけに「いつか作曲をしてみたい」と思う子が出てくるかもしれませんよね。
野中:そうですね。AIを使ってなんでもできるようになってきた時代ですので、それをきっかけに、自分の好きなことをAIと絡めて作っていけると本当にいいなと思っています。
FROGMAN:AIやデジタル技術って、なんか否定的に見る人もいるけれど、一方で、それによって可能性が広がることってたくさんあるんですよね。僕自身、20年前にアニメの「あ」の字も知らなかった人間なのに、「Flash」っていうツールを触ってみたらアニメが作れて、今こうやって20年ずっとアニメ監督をやり続けているんですから。だからツールに出会うのは悪いことじゃないです。
野中:AIが使えるようになってきて、なんでも任せてしまうけれど、結局その操縦桿を握っているのは自分自身だってことをちゃんと忘れずに、「これは正しいのかな」「いや自分はもっとこういうことを考えてやりたかったから、これは違うな」と判断できる力が大切だし、私たちもそれを一緒に学んでいく、一緒にやっていこうとするのが大事じゃないかなと思います。
FROGMAN:番組宛に「AIを教育の現場で使うと、考える力が弱くなってしまいそうで心配です」というメッセージが寄せられていたんですけれど、この答えが出てきましたね。
野中:日常的なタスク的なものはAIに任せて、そこから得られた情報をもとに、自分がどんな問題を次に発見して解決していくかってところに、考える力を注力していくという形にシフトしているかなとも思います。
花奈:考える力がシフトしていっているんだと、減っているわけじゃないよと。
FROGMAN:考えるベクトルが変わってきたんだよね。我々の子どもの頃で言えば「詰め込み教育」という風に言われて、記憶力が豊かな人間が勝ちみたいなところもあったじゃん。実際、記憶するためのテクニックを習得するのも1つのロジックではあったんだろうけど、でもやっぱり記憶力を競うって、本来このデジタル時代ではあまり意味がない。だから今までとは変わってきているんだろうね。
花奈:時代と共にね。
FROGMAN:それは悪いことじゃないっていうこと。先生がおっしゃったみたいに、やっぱりAIとの付き合い方を我々はこれから模索しなきゃいけない。何がいいのか、悪いのかを判断するとか、どれが正しいのかを理解するためにも、審美眼を持たなきゃいけないよね。
「AIは人類にとって敵になる」とか言われているけれど、「AIは敵だ」と教え込むのは人間なんだよね。我々はもっと、美しいものは美しい、正しいものは正しいという風に判断できる目を持たなきゃいけない。そういう教育を京都芸術大学附属高等学校ではされているということなんですね。
<番組概要>
番組名:鷹の爪団の人工知能ちょっと来い!~AIを使って世界征服じゃ!~
放送日時:毎週木曜 21:30~21:55
パーソナリティ:FROGMAN、花奈澪