放送作家の高須光聖が、世の中をもっと面白くするためにゲストと空想し、勝手に企画を提案していくTOKYO FMの番組「空想メディア」。今回の放送では、株式会社ビームス代表取締役社長・設楽洋(したら・よう)さんをゲストに迎え、お届けしました。
左から設楽洋さん、高須光聖
◆ものづくりに目覚めたきっかけ
高須:ご出身が東京都新宿なんですね。
設楽:小さい頃の新宿の西口は、高いビルがほとんどなかったので富士山が見えましたね。また、大ガードの端のところには戦後の傷痍軍人(しょういぐんじん)さんがいました。その後の経済成長をずっと見てきたというか。
高須:そうですよねえ。
設楽:1951年生まれなんで戦後なんですけども。ちょうど面白い時代というか、変化がものすごく激しい時代を生きてきましたね。
高須:昔から自分で何かを作ることがお好きでした?
設楽:好きでしたね。当時は世の中が貧乏だった時代ですから、おもちゃとかもあまりなかったので、糸巻きと割り箸とゴムで何かを作ったり、段ボールの破片でものを作ったりしていましたね。その育ちが、おそらくその後の「BEAMS」とかにつながっている気がします。
高須:そもそもファッションにはご興味があったんですか?
設楽:ファッションというよりも、いわゆる「アメリカのライフスタイル」に憧れていました。初めてテレビで観る作品がアメリカのホームドラマやディズニーだったので、自然とアメリカに憧れたんです。僕らの世代ってすごく単純で、男の子はアメリカに憧れ、女の子はパリに憧れていたんですよ。
高須:へええ!
設楽:今はそれ(選択肢)がすごく増えてきた感じですね。そして、中学に入ったときに初めて洋楽に興味を持って、そこからファッションにも目覚めていきました。
◆ファッションの情報は足で稼ぐ時代だった
高須:服装が生活を生き生きとしてくれるものだって気付いたのは、どういうきっかけですか?
設楽:中学の終わりぐらいからですね。中学のときに、モテたくてバンドを作ったんです。
高須:(笑)。
設楽:本当はロックをやりたかったんだけど、エレキを買えなくてフォークをやりました(笑)。それで、バンドの衣装をそろえるときに、なけなしのお金でロンドンストライプのボタンダウンシャツ、コッパン(コットンパンツ)、コインローファーを新宿で買ったのが最初です。
だけど、残念なことに中学校の指定の髪型が坊主だったんですよ。今でこそ坊主ってオシャレだけど、当時は何を着ても似合わなかった(笑)。その後、中学の終わりぐらいに高校に行くからっていうことで、坊主ではあるんだけど、ちょっと伸ばしている感じにしたぐらいからファッションに本格的に興味を持ち始めて、高校生ぐらいからは、アメ横に行ったり、横須賀に行ったりしてアメリカ産の服を探していましたね。
ただ、当時のインポートものは2種類しかなくて、百貨店の特選、今で言うスーパーブランドと、アメ横と横須賀の米軍放出品でした。“比較的無名だけど海外の良い物を売っている”みたいなお店がなかったんですよ。
高須:なるほど。
設楽:必死に探してもないし、そもそも情報誌もない時代でした。1976年に「BEAMS」がオープンして、その年に「POPEYE」(マガジンハウス)が創刊したんですよ。だから当時は、訳知りの人に聞くしか(情報を知る方法が)なかったんですね。それは苦労しました。
◆ブランドが生き残るために必要なこと
高須:この番組で(ファッションデザイナーの)菊池武夫さんにもお話を聞かせていただいたんですけども、やっぱりかっこいいんですよね。あの頃にブランドを立ち上げた方が、今なお日本のブランドとして生き残っている。“ぽっと出”と言ったらあれですけど、そういうブランドとは何が違うんですかね?
設楽:自分なりのものを持っている、そして、基本が分かっている人は残りますよね。お笑いの世界でもアーティストの世界でもそうですけど、一発当てることはたまにできるけれども、ずっと残り続けていくのは、ファッションの世界でもすごく大変です。
あるブームが過ぎ去った後も、基本を知っていて服の作りを知っている本物のお店はそのまま残っているけど、ブームだけでウケていたところはみんな“どこに行っちゃったの?”って感じですよね。そこは、芸能の世界ともすごく近いのかなと思います。
高須:わかりやすいですよね。
設楽:「BEAMS」は創業して46年目に入りましたけども、「BEAMS」ができるちょっと前(1972年)に、ユーミンがデビューしたんですよ。そして、「BEAMS」がオープンした頃に永ちゃん(矢沢永吉)がソロ活動を始めて、同じ頃にサザンオールスターズも出てきたんです。
高須:すごい時代!
設楽:毎日のように新しいものが出てくるなか、今でも対等な位置で残り続けている方々ですよね。ファッションも同じで、新しいブランドや店ができては消えて……そのなかで、なんとか46年間も残ってきたのは奇跡に近いかなと思います。
<番組概要>
番組名:空想メディア
放送日時:毎週日曜 25:00~25:29
パーソナリティ:高須光聖
番組公式Facebook:
https://www.facebook.com/QUUSOOMEDIA/