青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMの番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。10月16日(日)の放送では、林野庁 林政部 木材利用課長の小島裕章(こじま・ひろあき)さんに、「今こそウッド・チェンジ! 木のある暮らし」をテーマに話を伺いました。
(左から)青木源太、小島裕章さん、足立梨花
◆世界有数の森林国・日本
日本は国土の約7割が森林であり、国土面積に占める森林面積の割合である森林率は、OECD(経済協力開発機構)加盟国38ヵ国中3位という世界でもトップクラスの森林国です。ちなみに、1位はフィンランド、2位がスウェーデンです。
さまざまな取り組みにより、国産材の供給量は12年連続で増加しており、2020年には、約半世紀ぶりに自給率が40%台に回復。とはいえ、1955年の自給率は96%ほどだったことから、まだまだ回復の伸びしろがあると言えます。
そして今、日本の人工林が“伐りどき”を迎えています。人が植えて育てた木(人工林)は、50年を超えると“主伐期(しゅばつき)”という森林の更新のために伐採が必要な時期を迎えるのですが、日本は、戦後まもなく荒廃が進んだ山々に積極的に植栽をおこなったため、「今まさに50年を超えた人工林が収穫のときを迎えている。人工林を良い森林として維持するためには、“伐って、使って、植えて、育てる”という森林のサイクルが守られる必要がある」と小島さん。
また、その量は人工林面積の約半分を占めており、「より森林資源の利用が求められていて、政府でも積極的に取り組みをおこなっている」と強調します。
森林にはさまざまな機能があります。木が土のなかでしっかり根を張ってくれるため、大雨のときなどに土砂が流れ出したり、崩れたりするのを防いでくれたり、「緑のダム」としての働きもあり、森林に降った雨や雪が土の隙間のなかにゆっくり染み込んで地下水となり、川に流れ出ます。このダムのような働きによって、川の水量の変化を小さくして洪水や渇水が緩和されています。さらに、森の土に染み込んだ水は、地層の隙間や岩の割れ目を通るうちに濾過され、そこに適度なミネラルも溶け出して含まれるため、おいしい水にもなります。
こうした森林の多面的な機能が適切に発揮されるためには、森林のサイクルを維持し、良い森林を保つことが大切です。また、十分に成長した人工林が伐採されないと、新しい木を植えられず、木材の販売による収益もなくなり、ほかの森林の手入れもできなくなってしまいます。そうなると、老木や手入れ不足な森林ばかりになってしまい、森林機能の発揮ができないうえに、必要なときに良い木を調達することも難しくなるなど、悪循環を生みます。
しかも、木も人間と同じように成長期のほうが盛んに活動するため、若い森林のほうがCO2を吸収し、高齢になるにつれてCO2の吸収量が減少します。人工林を若返りさせることはSDGs(持続可能な開発目標)で掲げている「気候変動に具体的な対策を」などに貢献することにもつながるので、「それを実現するためにも、高齢化した人工林を伐採して、成長著しい若い森林を確実に造成していくことが重要」と声を大にします。
◆私たちの生活でもできる「ウッド・チェンジ」
人工林を若返えらせるためには「ウッド・チェンジ」が必要不可欠です。ウッド・チェンジとは、身の回りのものを木に変える、暮らしに木を取り入れる、建築物を木造・木質化するなど、木の利用を通じて、持続可能な社会へチェンジする行動を指します。
「木には優れた性質があるので、目的に応じて活用してみてほしい」と小島さん。ちなみに、スギの木の香りは、血圧が下がるなどのリラックス効果が科学的に確認されており、「インテリアなどに利用するのもおすすめ」と言います。
近年、建築物における木材利用の促進に関する法律が改正されたことやSDGsへの配慮などから、大学のキャンパス、企業のビルなどで木材を利用した中高層の建築物が続々と誕生しています。
鉄筋コンクリ―トや鉄骨と木材のハイブリッド建築による、中高層の木造建築物が建設されており、すでに14階建てのビルもあります。さらに、2028年度には地上約100m、20階建ての木造建築物が都心に誕生する予定で、「将来的には、70階建ての木造超高層建築物も登場するという話もある」と補足します。
また、2015年から「ウッドデザイン賞」という、木の良さや価値を再発見できる製品や取り組みについて、特に優れたものを消費者目線で評価し、表彰する顕彰(けんしょう)制度も。過去に受賞したものには、ボディ全体に岩手県産のブナを使用した「木のヘッドフォン『Konohazuk H3』」(2017年・奨励賞(審査委員長賞))や、ヒノキでできた枡型のおひつ「木製の冷凍ご飯容器『COBITSU』」(2021年・優秀賞(林野庁長官賞))などが選ばれています。
こうした木材製品を利用することだけではなく、間伐材を利用した紙製品を使うこともウッド・チェンジと言えます。間伐された木の一部は、加工されて紙製品に生まれ変わっているため、「封筒や紙コップ、紙皿などを購入するときには、間伐材マークがあるものを選ぶなど意識していただければうれしい」と小島さん。
また近年は、間伐材などの国産材を利用した「森を育む紙製飲料容器」通称“カート缶”も徐々に普及しています。カート缶は、容器の紙の原料に間伐材を含む国産の木材を30%以上使用しているため、「カート缶飲料を買うと、国産材の利用を推進することになり、国内の森林の整備や山の資源の循環利用につながる」と言います。
あらためて、小島さんは「森林がさまざまな機能を発揮して、私たちが森林資源を持続的に利用していくために大切なのは“伐って、使って、植えて、育てる”森のサイクルです」と強調。
そして、10月が「木材利用促進月間」であることにも触れ、「みなさんも、これを機に木や森について考えていただき、意識を変えることで環境を良くしていきましょう。ぜひ、みなさんの暮らしに木を取り入れてみてください。Let's ウッド・チェンジ!」と呼びかけました。
「ウッドデザイン賞」を受賞した製品を手にした足立は、機能性の高さに驚き「木製だから古き良き物というイメージがあるかもしれないけど、今回そうじゃないと知ることができた。私も少しずつウッド・チェンジしていこうと思いました」とコメント。
青木は、森林は高齢化するとCO2の吸収量が減少することに着目し、「地球環境のためにも、50年ぐらい経って伐りどきになった木は、どんどん伐っていくことが良いということなんですね」と語りました。
(左から)青木源太、足立梨花
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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/collection/