青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMの番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。10月23日(日)の放送では、文部科学省 総合教育政策局 地域学習推進課 課長の黄地吉隆(おおち・よしたか)さんに、「コミュニティ・スクール」をテーマに話を伺いました。
(左から)青木源太、黄地吉隆さん、足立梨花
◆今注目の仕組み「コミュニティ・スクール」
コミュニティ・スクールとは、2013年からの10年間で、導入する学校が約10倍になっている今注目の仕組みで、“いじめ”“不登校”など、学校と地域を取り巻くさまざまな課題を解決に導くだけでなく、未来を担う子どもたちの豊かな学びや成長を支えることができます。
学校が抱える課題として、“いじめや不登校など生徒指導に関する課題”“先生の働き方改革”“保護者の学校に対するニーズの多様化”などが挙げられます。特に先生の業務は、授業やその準備のほかにも、部活動の指導や放課後の補習、進路相談、家庭の状況の把握、児童・生徒への生活指導など多岐に渡るため、「これからの教育では、学校だけでなく地域社会のみなさんと一緒になって取り組んでいくこと、そのための意識や働き方を改革することが大事なのですが、現状、先生方は大変忙しいことが調査結果からも指摘されている」と黄地さん。
また“保護者の学校に対するニーズの多様化”については、例えば、英語やプログラミング教育の充実を求める保護者もいれば、芸術やスポーツなど子どもの個性を伸ばす教育を求める保護者がいたり、それよりも受験対策をしっかりしてほしいなど、保護者によって学校に求めるものはさまざま。こうした学校の課題について、黄地さんは「ますます複雑化・困難化している」と言います。
一方、地域が抱える課題もさまざまで、少子高齢化や核家族化などにより、以前と比べると地域のつながりや支え合いが薄くなっていることが指摘されています。また、そうした影響で、子育て家庭や高齢者世帯への見守りや支援が届きにくい、地域で取り組む防災・防犯対策が十分におこなえないなど、福祉面や安全面などの課題も浮き彫りになっています。
そこで、それぞれが抱えるさまざまな課題について、「学校と地域が力を合わせて、解決に向けて取り組もうと設けられた仕組みが“コミュニティ・スクール”です。一言でいえば、学校運営に学校や保護者、地域の住民が一体となって取り組む仕組み」と説明。
従来では、学校内だけで学校の運営方針を決めていましたが、コミュニティ・スクールでは、校長が学校方針を保護者や地域住民によって組織される学校運営協議会に説明し、どんな学校にしたいのか、どんな子どもたちに育ってほしいのかなど、さまざまなことを話し合いながら決めていく“社会に開かれた学校教育”を目指します。そして、すでにこの仕組を全国の公立学校の約4割にあたる約1万5,000校が導入しており、今後ますます増えると言われています。
また、この仕組みによって、例えば、地域の方々に協力してもらいながら放課後の学習支援や体験活動などの機会の創出、授業の補助、校内の清掃、登下校の見守り、部活動のサポートなど、さまざまな取り組みがおこなわれています。
これによってどのような影響があるのかと言うと、「先生の負担が軽減できるだけでなく、“地域社会のためにどうしたら良い教育ができるのか?”といったポジティブな意識を先生に持ってもらう機会が増えることで、働き方改革にもつながる。そして、地域のみなさんにも、学校の現状を良く分かっていただくことができる」と黄地さん。
学校と地域が連携・協働すれば、それぞれの課題解決にもつながる可能性があることから、「こうした学校内外における活動には、保護者や地域住民だけでなく、PTA、社会教育団体・施設、文化・スポーツ団体、企業やNPO法人にも積極的に参画していただき、地域と学校の実情に合った学校内外における活動を充実させていければ」と話します。
◆導入によるメリット、さまざまな好事例も
番組後半では、コミュニティ・スクールでおこなわれている具体的な取り組みを紹介しました。
ある学校では、GIGAスクール構想により、ひとり1台パソコンなどを利用した学習活動が推進されたことによって、子どもたちへの操作のサポートやプログラミング教育などが課題となっていました。そこで、企業を退職した方や研究者に協力を仰ぐことに。それに応じてくれた方々が、学校応援団としてプログラミング教育へのアドバイスや支援などをおこない、先生のサポートをしているそうです。
また、実際に効果が出ている事例も。2006年度にコミュニティ・スクールを導入した学校では、生徒の問題行動や補導件数の多さなどが課題になっていました。そこで学校側は、校内での困りごとなどを包み隠さず保護者や地域の方々に説明し、これからどういった学校にしたいのか、どんな生徒を育成したいのか、そのために何が必要なのかを、学校、家庭、地域の三者で議論を重ねた結果、保護者、地域、教員、警察が連携して“夜間パトロール”を開始。すると、2009年には1,000件を超えていた補導件数が、翌年にはわずか24件に! その後も減り続け、2019年にはわずか2件になったそうです。
この結果に、黄地さんは「開かれた学校の姿勢に本気度を感じた地域の方々や保護者が、課題解決を学校だけに任せるのではなく、当事者として学校運営に関わり、ボランティアでパトロールなどの校外活動をしたからこそ成果があった」と評し、「まさにコミュニティ・スクールの導入で学校、地域、そして子どもが変わった好事例だと思う」と力を込めます。
さらに、先生の働き方改革を推進した事例も。ある市では、コミュニティ・スクール導入後、育てたい子どもの姿や学校・家庭・地域の課題を共有したうえで、学校業務の見直しを実施。例えば、職員会議や終礼の時間を短くする工夫や、一律の家庭訪問を廃止して希望懇談制に変更するなど、業務のなかで廃止できるもの、簡略化できるものを検討し、できる改善から進めたそうです。そのほか、さまざまな見直しをした結果、先生の1日あたりの超過勤務時間が、前年の同じ月と比べて約30%も減少したそうです。
また、地域や保護者が一緒に協議して決定した学校運営は、いわば“保護者・地域からのお墨付き”のようなものなので、「その後の具体的な取り組みについても、保護者や地域の理解を得やすく、より積極的に改善していくことができる」と導入のメリットを挙げます。
最後に、黄地さんは「学校と地域が連携・協働しておこなう学校内外における活動には、さまざまな企業や団体にも参加していただきたいと思っています。コミュニティ・スクールという取り組みがあることを知っていただき、保護者として、地域の住民として、さまざまなスタイルで積極的に関わっていただければ」と語りました。
今回の話を聞いて、足立は「みんなが関わり合って、学校や地域、子どもたちを育てていくのは素敵だなと思った」と感想を口にします。また青木は、印象に残ったこととして「社会に開かれた学校教育」を挙げ、「今までは先生方と生徒、保護者だけという感じだったが、地域の住民も一体となって取り組むという社会に開かれた存在なんだなと感じた」と話しました。
(左から)青木源太、足立梨花
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聴取期限 2022年10月31日(月) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/collection/